最近小説のたぐいはほとんど読まなくなってしまったけど、学生の頃は推理小説もいろいろ読んだ私です。そんなばかな!みたいなトリックもありましたよね。苦労して引っ掛けた紐を引っ張るとドアがロックされるとかね・・・・。そして密室が完成する。
しかし現実にメトロポリタン歌劇場で残忍な殺人事件があったということは今日の今日まで知りませんでした(もしかして有名な話なのかもしれません)。クラシックFM誌に掲載されていて知りました。事件のあらましを訳してみることといたします。被害者のご冥福をお祈りするとともに、このような事件がふたたび起こらないことを願います。
https://www.classicfm.com/artists/new-york-met/violinist-helen-mintiks-murder-opera-house/
https://www.thestrad.com/playing-and-teaching/remembering-helen-hagnes-after-40-years/10938.article
いまから42年前の1980年7月23日午後9時30分、ベルリン・バレエがメトロポリタン歌劇場に客演していた時にオーケストラで演奏していた30歳のヴァイオリニスト、ヘレン・ハグネス・ミンティクスが休憩のあと、ピットに戻ってこなかった(休憩の前のプログラムはテープで上演されたため、休憩時間に加えて45分の時間があった)。
午後11時30分に公演が終わった後も彼女の姿は見当たらなかった。ヴァイオリンはピットの席に置かれたまま、ロッカーには服が入ったままだった。警察は彼女は建物の中にいるに違いないと考えた。劇場全体が捜索され、翌朝8時30分に遺体が発見される。彼女は6階建ての建物屋上にある換気口から落下していた。9-13メートルほどの高さである。
検死が行われた結果、転落死と断定される。推定死亡時刻は午後9時から11時半。落下したあとも彼女はしばらく生きていたと結論付けられた。
彼女は目隠しされていた。特殊な結び目で結ばれていたため、舞台係に注目が集まる。歌劇場の舞台裏は迷路のようになっているため、その意味でも劇場を熟知していた者に警察は嫌疑をかける。25人の捜査官が24時間以内に800人の職員全員をインタビューすると警察は発表。
そして舞台係のクレイグ・クリミンズ(当時21歳)が被害者に「4階に探しているダンサーがいる」と言いながら一緒にエレベーターに乗った姿が目撃されていたことがわかる。
度重なる尋問の末にクリミンズは殺害を自白。逮捕された。殺人とレイプ未遂容疑の罪でクリミンズは「20年から終身刑」の判決を受ける。被害者の夫はメトロポリタン歌劇場を訴えた・・・・。
被告は2年に一度仮釈放を申請しているが、毎回却下されている。次に仮釈放の申請ができるのは2022年、今年である。
なおメトロポリタン歌劇場の死亡事故はこれだけではない。1996年にはヤナーチェクの《マクロプロス事件》上演中にテノール歌手が死亡した事件、また1988年に自殺した歌手もいるという。