本当にこういう事がこれからも多発する、というかすでに似たような事象があちこちではっせいしているわけなんですが、さすがに公演の間際で、コロナ陽性者がオーケストラから出たため中止っていうのはなかなかない劇的イベントだと思います。サン・フランシスコ交響楽団。指揮者はエッシェンバッハ、ソリストはピアノのヤン・リシエツキ。
S.F. Symphony cancels matinee after positive COVID tests among orchestra, then resumes performances
https://datebook.sfchronicle.com/music/s-f-symphony-cancels-matinee-concert-after-positive-covid-tests-among-orchestra
お客様が客席についていて、もうすぐ開演、という時に突然のアナウンスメント。「今日のコンサートは中止です」。いやー、これは自分がそこにいたらどう思うだろうか。うへー、と思うのは皆同じでしょう。その後に「しょうがない、やっぱりそういうこともあるよね。ま、気を取り直して次行こ、次」と思えるだろうか。
そう思えるといいな、と思います。とはいえ、お着替えもして出かけてきたわけなんで「がっかり」とか「ガビーン」とかいう音が(程度の差こそあれ)全員の頭に浮かんだと思いますね。そこで、一計を案じた!!ピアニストがショパンを演奏しましょうかと申し出てくれたのだ。あるいは、オーケストラ側がピアニストに何か出来ないかと相談して、ではショパンをと言ってくれたのでありましょう。
ヤン・リシエツキはポーランド系カナダ人ピアニスト。ドイツ・グラモフォンからCDがでているよ。実は背が高いんだ。その彼がショパンの練習曲第一巻と夜想曲を組み合わせたプログラムを1時間演奏。
練習曲 ハ長調 Op 10, no.1
夜想曲 ハ短調Op. posth.
練習曲 イ短調 Op. 10, no.2
夜想曲 ホ長調 Op. 62, no.2
練習曲 ホ長調 Op. 10, no.3
練習曲 嬰ハ短調 Op. 10, no.4
夜想曲 嬰ハ短調 Op. 27, no.1
夜想曲 変ニ長調 Op. 27, no.2
練習曲 変ト長調 Op. 10, no.5
練習曲 変ホ長調 Op. 10, no.6
夜想曲 変ホ長調 Op. 9, no.2
夜想曲 ハ短調 Op. 48, no.1
なるほど、練習曲と夜想曲がこうも並ぶと目がチカチカするようだね・・・。ってそんなことより、練習曲集Op.10に夜想曲を差し込んでいくスタイルだ。専門的な事を言うと、ご近所さんの調で進行していくように並べてあるってことだ。
これ、後半もあるんだろうな、とおもってググってみたらやっぱり後半もありました。プログラム全体にご興味の有る方はこちらをご覧ください。
https://fourarts.org/event/jan-lisiecki-piano/
実はこのプログラムでリシエツキは先週アメリカで演奏しているので、2時間弾こうかと思ったらそれも(心理的な負担はともかく)可能だったのだと思われます。でもあまりに急なキャンセルだったため場が混乱し、時間的に1時間しか残っていなかっただろう、とも推測いたします。ともかくリシエツキは強度のストレスがかかる代替公演を行ったのです。おお!!すげえ!!
これにてリシエツキの株はさらに上がり、共演者のエッシェンバッハもブラボーブラボーと言ったのに違いないのだ。なんなら今日と明日の公演は二人でデュオリサイタルにしたらどうか!
とも思ったけれど、今日明日は無事に予定されていたプログラムで公演が実施されるようです。おそらく陽性者のパートにはエキストラの演奏者を呼んできてやるのでありましょう。エキストラ奏者もぶっつけ本番だから強度のストレスがかかりますが、そこはプロでありますから、難なく(ヒーヒー言いながら)乗り切ることはまず間違いございますまい。