97歳で現役ピアニストやで、という昨日の話題とは真っ逆さまとでもいうべきお話でしょうか。マルティン・グルービンガー、ザルツブルク出身のスター打楽器奏者です。ハリソン・パロット社所属。いま今日この時点では38歳だが、来年に40歳になる、それで引退するんだそうです。
https://slippedisc.com/2022/01/percussion-star-retires-at-40/
40で引退とは、これいかに。
ピアニストはだいたい生涯現役、指揮者もだいたい生涯現役。弦楽器奏者は70前後か、管楽器はもう少し若いか(※いずれも個人差があります。80過ぎてオーボエ吹いてるスイスのスーパーじいちゃんもいますね。ヒント:ケチャップ)。では打楽器は?
にしても器楽奏者で40で引退っていうのはさすがに早いように思いますね。どうしちゃったんだい、ベイビィ?
疲れちまったんだぜ(Exhausted)、というのがその理由だそうです。人には他人の思いもよらぬ考えがあるもの、肉体的にはまだ大丈夫なのでしょうが、心が疲れてしまった。ならば引退すればいいですやん。無理して心が病んでしまっては身も蓋もない。惜しまれつつ引退、美しいですね。そしてもし、万が一、何年かしてまた気が向いたら不死鳥のごとくカミングバックすればいいのだ。
引き際というのは常に難しいものです。老いて衰えてそれでもなおそれをさらけ出すタイプと、そういうのは嫌で絶頂の時にスパッとやめるタイプ、その中間を行くタイプ。どれが正しいとかはありません。ボロボロの演奏をしながらも舞台に立ちつづける人を指して「さっさと辞めるべき」とか「金儲けのためならなんでもやるのか」などと言う方もおられますが、あえてスガちゃん風に表現するなら「その指摘は当たらない」んです。本人が決めることですから。
というわけでユジャ・ワンとマーティン・グルービンガーが共演したストラヴィンスキー《春の祭典》打楽器とピアノバージョンをどうぞ。