世界のオペラの殿堂、ミラノ・スカラ座では合唱団でクラスターが起こり、つい先日はバレエ団でもクラスターが起こりました。なかなか厳しい運営が続いています。以前のようにオペラやバレエの公演が行われるようになるにはまだまだ相当な時間がかかるのではと思います。
そんななか、総裁のドミニク・メイエ氏が政府に向けてメッセージを発信。
「イタリアの劇場を開けなければならない。マスクをつけることのできない人々すなわち歌手、合唱団、俳優、ダンサー、管楽器奏者たちにとって解決策はたった一つしかない。ワクチンだ。・・・・劇場で働く人々に安全な場所を作り上げる必要がある。」
https://tg24.sky.it/spettacolo/2021/03/09/scala-meyer-covid-vaccinati
https://operawire.com/dominque-meyer-appeals-to-italian-government-to-vaccinate-all-artists/
ポジショントークだと言われれば、はい、そうでしょう。間違いなくポジショントーク。イタリアにおいて歌劇場の占める位置がどういうものなのか、経済政策や文化政策においてどれほど重要か、ということを含め政府が検討し対応する(あるいは対応しない)、といったところでしょうが、こうやって業界の中で影響力を持つ人たちが声を上げて行くことは大事かもしれません。密室でのやりとりではなく、こうして明快に声を上げたら、おお、そうか!発言したか、ということが極東の我々にも見えますもんね。
だけど素朴な疑問。ワクチンを接種したら感染しないし感染させないの?
わかりません。でも少なくとも感染率や重症化率も大きく低下しているようだし、ある一定以上の効果がありそうだな、と思います。アメリカではワクチンを打てば条件付きでマスクは不要(ただし公共の場ではマスクしてね)とする専門機関の発表もありましたし、欧米ではワクチンに対する期待は相当だと感じています。
ただ、目の前にいる人が「ワクチンなら受けた」と申告していたとして、本当に接種しているかどうかはわからない。仕事欲しさに口で言ってるだけかもしれない。「ワクチンパスポート」というものを作るという計画もヨーロッパでは進行中のようですが、それがいわゆる偽のパスポート、お金を出して違法に取得したパスポートかもしれない。
いろいろ疑問が出てくるわけですが、いずれにせよ現状としては「ワクチンを接種した人だけが集まって音楽をやれる」とするのが、わかりやすく可能な唯一の線引き、と言えるのかもしれません。少なくとも自分が接種していたらリスクは大きく低下するようだし。とはいえこれもあくまで推測や確率論に過ぎませんし、変異種のこともありますから、ワクチンに絶対的な期待をすべきでもない。悩ましいところです。
最終的に自分や家族や仕事の仲間たちを守るのは自分自身の判断と行動である、とは思いつつ、経済活動と天秤にかけたときに「ワクチン」というので線を引いてやってみる、だめだったらまた考える、これ以上のスタンスは今のところないのではないかなと。
他の国々の劇場関係者たちがどう思っているのか。ドミニク・メイエに続くメッセージが他の劇場から出るのかどうか。気にしたいところであります。