親には忍耐が必要です。どうしてご飯をテンポよく食べられないのか、どうして着替えられないのか。どうしてトイレに行かないのか!!そこの君っ!!もじもじしながらずっとテレビ見てないでとっととトイレへ行きーやっ!!
不思議でしょうがないのである。子どもの行動というものは。何度注意してもだめなんである。
しかし安心してほしい、その悩みはどうやら世界共通のようだから。問題は、その状況に直面したとき、どう対応するかなのだ。・・・ってことはわかっていますけれど、いつだってどこだって冷静に対応できますでしょうか。自分を問いただしたい。
マキシム・ヴェンゲーロフ、ロシア出身のスターヴァイオリニストの一人であります。自宅からのオンラインレッスン(マスタークラス)をしていたところ、なんと映像に娘が映りこみ中断。しかもこれは様子を見ますに、こっそりと部屋の端を横断しようとして失敗したようだ。
って、いやいやいやいや、これ、どうみてもバレバレでしょう。ソロソロ行けばうまくいくと思ったのだろうか!これは見つかりますって。それともパパに相手をしてほしかっただけかな?ヴェンゲーロフの公式サイトを見ると、このオンラインマスタークラスは事前に収録したものとあるから、ライブでは流れていない。いわゆるNG動画と言えましょう。
父親に注意され、ピュッ!とバックして逃げ出す娘リサ。生徒も爆笑。
ヴェンゲーロフとしては、生徒(ピアニストを含め2名)がいる状況であります。カメラは少なくとも2台あり、その操作をしている人間もいるわけなので、切り替えだけかもしれないにせよ、もう1人は現場にいるでしょう。合計3名の人間の目があるわけですから、怒り出すわけにもいかず、冷静に対応している、というか、冷静に対応せざるを得ない。しかし目が優しいから、あまり怒っているわけでもなさそう。
YouTubeのコメント欄にロシア語でヴェンゲーロフがなんと娘に言っていたのかを書いてくれている人がいますが「あとで遊んであげるから。でもいまは邪魔しないで、お願い。」だそうです。
これが前時代の芸術家だったら大爆発していたかもしれない、と思うとブルッと震える。マーラーのお部屋を横切る、カール・ベームのお部屋を横切る、ハイフェッツのお部屋を横切る。いずれを想像してみても恐怖の結末しか見えない。そう、大憤激だ!!いや、それか自分の娘だったら彼らとて反応は違ったのだろうか。
しかし意外(?)なことにですよ、過去の偉大な芸術家と言っても、リヒャルト・シュトラウスのお部屋を横切る、カルロス・クライバーのお部屋を横切る、を想像しても、ほのぼのとしたお花畑のような雰囲気しか生まれないようなのは、時代だけではない、ということでしょうか。「なるほど」と私は合点し、ひとりごちる(※現実にはおっそろしいことになる可能性があります。危険なので絶対に真似しないでください)。