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緊急事態宣言が出てもクラシック音楽のコンサートが中止にならない理由

緊急事態宣言が出て2回目の朝です。みなさま、静かにお過ごしでしょうか。ヒャッハー!シャンパン泡泡飛沫パーティー!などされていませんでしょうか。どうぞご安全に。

緊急事態宣言を受けてクラシック音楽のコンサートはどうなるのだろうか、と誰しもが思っていたのではないかと思いますが、蓋を開けてみたら、イベントに関しては「5000人を上限とした50%までの入場者、20時までの終演を要請、ただしすでに発売していた分についてはいずれも例外」という規制内容。

https://ontomo-mag.com/article/column/state-of-emergency2021/

事実上やってもいいよというお墨付きと言える。あるいは、人々の行動の制限はしたいが補償金は出せない、というスタンスに基づき現場に可能な限り配慮した内容、と言えるかもしれません。たしかに、いきなり明日以降のコンサートを中止にしてください、とか、50%越えた分を払い戻ししてください、となると、現場にかかる負担は大きく、いろいろと混乱もしますけれど、そもそもこれを緊急事態宣言と言ってよいものか。

結果として世の動きを見ますと、都内の多くのコンサートホールは引き続き開館し、クラシック音楽のコンサートについては予定通り実施する主催者もかなりの数にのぼるという印象を受けています。

感染の拡大を不安に思わない主催者、ホールはないはずです。やってもいいんだろうか、自分たちのコンサートやホールで感染やクラスターが起こったらどうするという不安、危機感は絶対にある。しかし、公演を中止することで受ける経済的ダメージへの不安もまた大きい。両者を天秤にかけた結果の判断でしょう。「コンサートは即刻、全面中止を強く要請」ぐらいの言葉がなければ、コンサートはなかなか中止にはならないのでと思います。

たとえば、現在来日中の海外アーティストたちの渡航費や宿泊費(そして14日隔離のための追加費用)は戻ってきません。1人につき最低でも数十万、100万円以上かかっているケースもあるでしょう。それを捨てることになる。広告宣伝費や、公演に向けて動いていた様々な費用、人件費なども多額にのぼる。

そしてホール代の問題もあります。中止したらレンタル料は返金されるのか。皆さんは大ホールと呼ばれるクラシック音楽のホールを借りると幾らぐらいするかご存知ですか。例えばサントリーホールの大ホールは午後、夜間を借りると200万円を越えるんですよ。

https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/rental/pdf/suntory_hall_rent02_201212.pdf

反対にホール側、および関連業者としてはキャンセルが相次ぎ、次々返金せざるを得ないとなると、レンタル料などの収入が激減し大問題です。

去年の春以降、各団体の体力がどんどん奪われ、崖っぷちに立たされている中、要請を受けたから「はい、では中止にしましょう」「無観客で」と簡単に言えるほど資金面で恵まれている団体はありません。ジレンマです。なにより要請に応じて中止しても「補償金は出ない」という点が大きい。つまり、お金の問題なんです。

ただし、現実的には緊急事態宣言があけるまではチケットの売れ行きがピタッと止まる、あるいは極めて低調となる可能性は高いので、発売前のコンサートに関しては、手元の資金と相談→中止or延期となるケースもある程度出てくるのではないかと思います。