自分で招聘していて自分で言っていれば世話はないと言えばそれまで。しかし、人から言われれば嬉しいではないか。
昨日、ドイツ在住の知り合いの演奏家がメッセージで「Alexey Zuevとんでもなく素晴らしいですね」と書いてくれたので、 ルンルン気分になって電話をした。「ソコロフより弾けるんじゃないんですか?生半可じゃない。こんなの他にいますか?」お世辞って大好き。自分が呼んだアーティストが褒められるってこれ以上に嬉しいことって世の中にあるのかしらと常日頃思っているワンおばちゃんとしては嬉しいーいと叫びたくなった。
しかし、現実は正反対で、これ以上売れていないコンサートはあるのか。「素晴らしい」と「売れる」は比例しないを証明するための方程式の様な事に……かつてアレクサンドルマルクス初来日の時350名位のホールに12名であった。その記録はまだ塗り換えられていないが、50名以下なら12名と大差ない。
今から丁度30年前だった。メトネルの室内楽の夕べで12名の聴衆は20分にわたって熱狂的なスタンディングオベーションをしたのであった。知り合いの多くは、招待券が来るのを待っていたらしい。同業者には絶対動員すべきあったとその後も何度も繰り返し言われた。今でも考える。あの時動員すべきであったかのかと。「あの時の熱気は動員した客ではあり得なかったでしょうね。むしろ気持ち悪いでしょうね」シチェードリンのヨーロッパ初演を数多く経験しているアレクサンドル・マルクスは、「聴衆の心が音楽に向かって纏まって一つの大きなエネルギーを作り上げるということを考えれば、12名の聞きたいと言って、チケットを購入してきてくれる人々の方が300名の招待されたお客様よりも、演奏する側にとってはありがたいのではないでしょうか」ということになる。
しかし、コンサートを主催する側としてはね……..でも、不思議と30年経つと、経済的な成功よりも、本当に音楽的な満足の方が記憶には残るんですが、でも空気を食べて生活するわけにもいかないし、なかなか世の中うまくいきませんね……… それでも「ZUEVはただものでは無い」と言われて喜んでいるだけではいられない。