Blog

【コンクールの話1】

コンクールの話をするといつも思い出すのが北欧を代表するショパン弾きヤンネ・メルタネンである。

1990年のショパン・コンクールの一次の印象があまりにも強く、2011年のショパンの誕生日の記念コンサートに急遽代役を探していると東欧のオーケストラから言われ、列挙した名前は全て問い合わせ済みと言われて、思わず口から出たのがMertanenの名前であった。

20年の歳月を経ても鮮明な印象が彷彿と湧いてきて思わず彼の名前を口にしたのであった。

コンクールとは正に、ありとあらゆる意味で「出会いの場」である。ワンおばちゃん自身オーケストラに企画政策として奉職していた時は、そりゃ「欲」もあり「結果」に目が奪われてしまうこともままあったが、一次予選やセミファイナルで消えても、これはと思って声を掛けた素晴らしい音楽家に遭遇し、見守っているうちに大化けしたりして、後にオーケストラに招聘することが出来た事もあり、才能を発掘する貴重な場所と考えておりました。ファイナルよりも一次からゆっくり聞くと言うことの方が遥かに意味があることでは言うまでもありませんが、なかなかそこまで時間も取れないところが残念です。

ストリーミングで観れる時代になりましたが、その場で実際に聞く事でしか伝わって来ない感じ取れないものもあります。 今もってコンクールと言うものががなくならない事実からして、コンクールは降り回されることなく、如何対峙するかを知っていれば有益ですらあると思います。

Mertanenは初めて12歳でショパンを聞きピアノに憧れ、普通では考えられないほど遅く学び始め、4、 5年でシベリウス音楽院に入学し、タバシェルナとバシキロフに学び10年でショパン・コンクールの一次にたどり着いた。その後、イモラでラーザリ・ベルマンに学び他にもいくつかの国際コンクールで優勝してはいるが、彼を知るきっかけになったのは、あのショパンコンクールであった。その後34年の歳月が流れ,その都度、その都度彼のの演奏を聞く度に、言葉に表しようのない暖かい至福の“ひととき“を得てほっとするのである。コンクールよ、ありがとう!