リュビモフもググニンもフリスも皆んな食いしん坊。リュビモフに至っては、アンコールの曲間にも、今晩何を食べるんだと聞くこともあったぐらいだった。
食事は、音楽家にとってただ3食お腹を満たすだけのものではない。そこにはやはり文化があるとワンおばちゃんは感じている。
昨年、リュビモフの日本での最後のリサイタルの後、お気に入りのスペイン料理店で特別に営業時間を過ぎているにもかかわらず、お気に入りの料理を並べてもらった。その店のワインのセレクションは素晴らしくいつもリュビモフを鳴らせていた。
2日前に、たまたまそこで食事をして、リュビモフのお気に入りのワインを頼んだら店主が出てきて「このボトルが最後です」と言う。「?」「亡くなられたんですよ。まだ若いのに」小さな作り手の、個性的な素晴らしいワインを小規模に輸入していたスペインワイン専門の業者が突然亡くなられたそうだ。「Wさんの仕事と一緒ですよ。彼が亡くなってしまえば、これらの小規模の作り手のワインを輸入する人もいなければ、コンタクトもない。ほんとに素晴らしい個性的ないいワインを紹介してくれました。突然だったので、レストラン仲間と何とか連絡しあって、これらのワインを引き続き輸入してくれる人を探して続けたいと思って、今みんなにコンタクトを取ろうとしているところです。有名じゃなくても素晴らしい一級のものがある。そういうことを教えてくれた輸入業者でした」そうか、ワインの輸入業者と私たちの仕事も同じで本当に楽しんでくれる人に私たちは奉仕しているんだと思うと同時に身につまされるつ思いだ。
2日前、最後の二杯分の代金を支払い金曜日か土曜日に来るからと言って店を後にした。
先程、ゆっくりと、最後の1杯を、一緒にMCSを切り盛りしてくれている仲間と飲み干して今、帰路についている。
今までほんとに素晴らしいワインをありがとう。あなたのおかげで本当に愉しいひとときを過ごすことができました。リュビモフが「フランスに住んでいるのに隣国にこんな個性的なワインがあるなんて!」とご満悦だった顔を思い出しながら、こころから冥福を唱えました。
音楽だけではない、おいしい食事、うまい酒等、ささやかな楽しいひとときを提供する事で、人々の生活が豊かになることの役に立てるこに寄与する事がワンおばちゃんに与えられた使命だと思い今後もサロン・コンサートを続けていく決心を新たにしつつ、今地下鉄の駅を後にしようとしています。
今宵は印象的なワインの後に素晴らしい月が夜空で見守ってくれています。
ちょっとした幸せを大切に……