世の中は変化するもの、ファッションも変化するもの。りゅうちぇるだっていまやすっかりおとなしい格好をしている(と思って調べてみたら主に髪の毛が黒っぽくなっただけのようであった)。
しかるにオーケストラ奏者の衣服は長い間変わってこなかったのではないか。特に男性部門。燕尾服に蝶ネクタイというのが男性オーケストラ奏者の衣装としてずっと続いてきたかもしれない。既定路線だったかもしれない。
ウィーン・フィルの衣装はどうか。モーニングだったっけ、と思ってプレス写真を見てみたら上は黒、パンツはグレーだが蝶ネクタイではなく普通のネクタイでした。そうだそうだ、こういう格好だった。
そういえばむしろアメリカの方がドレスコードは厳しいと聞いたことがありますね。
かつてある日本人演奏家と一緒に「アメリカ中をツアーして回った」というマネージャーの方から話を聞いたことがあって、その方は「ラフな格好でお越しください」「カジュアルで」とか言われてほんとうにジーンズでパーティーに出かけて行ったら周りは全員タキシード、顔から火が出るほど恥ずかしい思いを何度かしたそうです。特に(こういう言い方をするとよくないのかもしれませんが)大都市圏ではない、いわゆる地方都市でその傾向が強かったとのことでありました。
さてフィラデルフィア管弦楽団(https://www.philorch.org/)。男性のコンサート衣装、これまで燕尾服に白い蝶ネクタイというのが決まりだったようですが、それを撤廃したそうです。これからは全身黒になった、つまり黒いジャケット、黒パンツ、黒いシャツに黒のネクタイ。あっ、ネクタイはするんだね。ネクタイなくたっていいのちゃいますかね。
地元の反応はどうか。フィラデルフィアの新聞に寄せられているコメントはいずれも、どちらかといえば燕尾服をなくすことに消極的のように感じられます。「服が変わってもチケットの売上があがるわけではない」(まあそれはそうかも)、あるいは「揃った衣装には尊厳と尊敬の念を与える何かがある」とか「揃った衣装は視覚的なまとまりをもたらせる。観客が混乱したり気が散ったりするかもしれない」というコメントもあって、それはそれでわからないでもない。
とはいえ、とりたてて苦情は寄せられていないそうです。オーケストラとしては燕尾服と蝶ネクタイを完全に否定するわけではなくて、うまく行かなければ元に戻すことも考えているそうですが、なんとなくの感じおそらく戻らないだろう、と。
ま、蝶ネクタイと燕尾服は堅苦しいもんね。すごく特別な時だけでいいのとちゃいますか。
アメリカのオーケストラのありかたも変わって行くということだ。