ショパンが亡くなったのは1849年です。最後に使っていたピアノはフランスのプレイエル社製で、製造番号は14180だそうでございます。プレイエルの創業は1807年なんで、会社ができてから42年。42年で1万4000台ってことは、均すと年に333台。創業当初は生産台数は少なかったでしょうから、1848年頃には毎日1台か2台ぐらい、あるいはもう少し完成させていた計算です。
さて、この楽器はショパンの死後(死の前説もあり)、ショパンの弟子でありあれこれと金銭的支援をした人物であり、ショパンをイギリスに連れて行くことに成功したスコットランドの裕福な女性、ジェーン・スターリング嬢によって買い取られ、ショパンの家族の手に引き渡された。そして死の翌年、この楽器は帰還を果たせなかったショパンに代わってワルシャワに戻されるのです。当時ポーランドはロシアに支配されていたので、楽器にはロシアの通関の赤いスタンプが押されているそうです。ぐおお!見てみたい!!(そこに反応するんか)
みなさんよく聞いてください。スターリング嬢はお金を払ってこの楽器を買っただけではなく、そのまま遺族に渡すというウルトラな慈善行為を行ったわけだ(なおピアノ以外の競売にかけられた多くの品々にも同様のことをしている)。ここ、ウルトラポイント。
●貴重な楽器の散逸を防ぐ
●遺族にお金が入る
●楽器はそのまま家族にわたす
つまり「奇跡の3重支援」なんですよ。しかも、じゃあとはよろしく!とパリでピアノを引き渡すのではなく、わざわざポーランドに送ってさしあげているのだ。送料もスターリング嬢が間違いなく負担してるはずだ。
なんと美しい。おお、おお!!(絶句)
……しばし感慨にふけったところで、それではそろそろよろしいか。ようこそおかえり。
つまり、遺族からすると、その楽器を売っぱらったらさらに儲かるなキシシシシシ(キモい笑い方するやつ)、って思ったかもしれませんが、やむにやまれぬ理由の無い限りそんな人でなしなことはしてはいけませんし、姉のルドヴィカがそんなことするわけないやろ!!ふざけんな!!
ハーハーゴホゴホ。で、ですよ。いまはワルシャワのショパン研究所が保管していて、ただいま絶賛修復中なんだそうです。どういうことかというと、戦争や紛争も見事生き残ってきたが、1950年代後半に「現代の弦に貼り替える」という蛮行が試みられた結果、音に決定的なダメージが与えられることとなってしまったようなのです。響板にもヒビが入ってしまったと。
その響板のヒビを修復し(全部交換したのかもしれない)、弦を当時プレイエルが用いていたものに近いものに交換するそのほかが行われている。フレームが歪むとかそういうダメージさえなければ、当時の音に近い音が再現されることになるのでございましょう。
ショパン研究所(ワルシャワ)のサイトにも写真がいっぱいあるんで、見てみて下さいね。日本語ですがポーランド人が書いているそうです。まじで日本語が上手や。
修理を手掛けるのはピアノ職人として名高いテキサスのおっちゃん、ポールううう・マクナルティいいいい!!!
おや、この髪型、、、どこかで見たことがあるな・・・・。そうだ。古楽専門のあの音楽事務所の社長や!!社長!!とうとうピアノ修復家になりはったんやね、お疲れさまです!!!(大誤解)
おがわ・・・いえ、マクナルティ氏の談によりますと、この楽器はほとんど演奏されておらず、状態は基本的にとても良い。値段はつけられない(ほど貴重)、そして気になる修復のほうは、製造者が期待した音の範囲内に収まるだろう、ということだそうです。つまり元通りになるやろ、ちゅうことです。実に素晴らしいことだ。どんな音がするのか、聴いてみたい。
そのうちこの楽器が日本にやってきて演奏される日が来るかもしれないし、来ないかもしれない。