アメリカで最も有名な現役の弦楽四重奏曲は、と問われたらおそらく十中八九、ジュリアード弦楽四重奏団という答えが返ってくるのではないでしょうか。エマーソン(来年解散予定)とかパシフィカとか、マニアックな人はジャスパーとか言うかもしれませんね。うん?ジャスパー?
えっ、ジュリアードって現役だっけ?とか思われるかもしれませんが、現役なんですよ。1946年結成。もう初代メンバーは誰もいないけど「ジュリアード弦楽四重奏団」という形で生き抜いている。そんなこと言ったらニューヨーク・フィルだって1842年の創立メンバーはいないがまだ活動を続けているよね。オルフェウス室内管(1972- )だって、イ・ムジチ(1952- )だって初代メンバーは誰一人いませんでしょう。
過去の演奏家たちが培ってきた精神を受け継ぎつつ、次世代へ次世代へ。こういうの、大事ですね。「仲が悪い」という”弦楽四重奏団あるある”な部分だけは引き継がない事を強く推奨したい。
おそらく弦楽四重奏団っていうのは、メンバー交代しながら名称を存続させて活動が続けられる最小サイズのクラシック音楽バンドだと思うんですよ。こうして人が代わっていっても同じ名前で活動を続けるというのは大切なことだと思います。「誰々ちゃんのいない●▲カルテットなんて!」という方もおられるであろう。それはそれで理解できますが、人類は前へ前へ、一方通行なのであります。過去から受け継いだものを今へ、そして未来へ。
ロジャー・タッピング、享年61歳。英国人ヴィオラ奏者。1月18日、家族に見守られながらガンで死去。
https://www.thestrad.com/news/juilliard-quartet-violist-roger-tapping-has-died/14351.article
1960年2月5日うまれ。ケンブリッジ大学卒。タカーチ弦楽四重奏団っていうこれまたアメリカに拠点を置く屈指のカルテットでも11年演奏していた経験を持つ。手練れという言葉がふさわしい。ジュリアード弦楽四重奏団には2013年に入団。3代目となりました(初代はラファエル・ヒリヤー、2代目がサミュエル・ローズ)。
ジュリアード音楽院も、ジュリアード弦楽四重奏団も公式サイトで訃報を伝えております。予定を見ますと次のコンサートは3月12日、フロリダで。とりあえずピンチヒッターで誰かが出るのでありましょう。もしくはそれまでに4代目の就任がありますでしょうか。
ご冥福をお祈りします。