ウクライナ情勢が予断を許さない状況が続いているなか、ミュンヘン・フィルはゲルギエフとの首席指揮者契約の終了を予告。2月28日月曜までにプーチンの軍事行動を非難しないのであれば、首席指揮者の契約を解除するとゲルギエフに通告したという。
ヴァイオリン・チャンネルに掲載された英訳によれば、ミュンヘン市長のディーター・ライターがその最後通牒を突きつけたとあり、その文章は以下の通り。ヴァイオリン・チャンネルに掲載されていた文章を英語から日本語に翻訳。その引用元であるドイツのウェブページはここ。重訳ということもあり、原文読める方、間違っていたらご指摘ください:
「私はヴァレリー・ゲルギエフに対する姿勢を明確にしたい。プーチンがウクライナに対して、そして今は特に我々の姉妹都市キエフに対して送った残虐な攻撃から、明確かつ議論の余地なく距離を置くことを強く求める。もし、ヴァレリー・ゲルギエフが月曜日にここで明確に立場を表明しないのであれば、彼はもはや我々のフィルハーモニーの首席指揮者であり続けることはできない。
「ウクライナの現状を私は深く憂慮しており、今日の出来事には衝撃を受けた。キエフはミュンヘンの姉妹都市である。私たちは皆、ロシアが今ウクライナに対して公然と戦争を仕掛けていることに混乱し、注視せざるを得ない。私は、ロシアの権力によるこの野蛮な行為には唖然としている。プーチンは、人命を顧みず、自身の民族主義的目標を残忍に追求している。この恐るべき無法な侵略は一刻も早く止めなければならない。私たちの懸念は、私たちの姉妹都市キエフ(ウクライナの他の多くの場所と同様に標的とされている)に特に当てはまる。現地の人々の苦しみを和らげるため、民間人への人道的支援を可能な限り行っていくのは当然のことと考える。
「ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の代表とともに、首席指揮者であるあなたには、ウクライナに対する無法な攻撃から距離を置くという明確なサインを出すことを期待している」
またゲルギエフと古くから関係のあるロッテルダム・フィルも、ゲルギエフに対し、プーチンのウクライナでの行動から公的に距離を置かないのであればゲルギエフとのコンサートを中止する、今年9月のゲルギエフ・フェスティバルも中止する、と発表。
●ミラノではスカラ座が、ゲルギエフが平和を推進しなければゲルギエフとのコラボレーションを終了する、と発表。
●ウィーン・フィルはニューヨークのあと、フロリダのネイプルズでも公演を行うが、その公演からゲルギエフの名前が消えた。
●ウィーン・フィルのアメリカ公演のピアニスト代役はチョ・ソンジン。ベルリンから駆けつける。
●デンマークではネトレプコの公演がキャンセルになった。
●英国ロイヤル・オペラは夏のボリショイ・バレエ公演の中止を発表した。
●今年のユーロヴィジョン・ソング・コンクールはロシア人の参加を拒否した。ロシアからの投票もできない。
https://www.nytimes.com/2022/02/25/arts/music/valery-gergiev-putin-munich-rotterdam.html
明確に今回のロシア政府の行動に対して反対の表明をするアーティストもいるが、ロシア国内のアーティストたちが声を挙げるのは容易ではないだろう。反対の声明を表明できるのはロシア国外に拠点を置くアーティストに限られるのではないか。
政治と文化は切り離して考えるべきか?現実はそう簡単ではない。加えて、生活のため声を挙げることができないアーティストたちもいるというのも事実である。声を挙げることのできないアーティストたちの立場は慮るべきであろう。