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ウクライナ国立歌劇場(キーウ)、3ヶ月ぶりに再開

キーウのウクライナ国立歌劇場が再開しました。戦争開始から3ヶ月が経過し、終わりが見えぬ中、これまで何度も再開の話し合いが持たれているが空爆の危険があり実現出来ていない、と漏れ聞いていましが、ついに再開の報。ただただ、素晴らしい。

https://www.theguardian.com/world/2022/may/21/bravo-reopened-kyiv-opera-drowns-out-russian-artillery

5月21日土曜日、ロッシーニの喜劇『セヴィリアの理髪師』が上演され、終演後には10分間のスタンディングオベーションが巻き起こりました。

チケットは完売。戦争が始まって以来、戸棚から出すことのなかったドレスやスーツを着た人たちもいたそうです。感無量だったことでしょう。また軍服姿の兵士などオペラを普段観ることのない人たちも劇場を訪れたとあります。

ある中尉の言葉「私たちは勝つ、その一種の約束である。命は続く、死ではなく。」

劇場に実際に行った人のツイート。「上演中に人々が声を立てて笑ったり微笑んだりしているのを見るのは素晴らしい」。

いや本当にすばらしい。

主役を歌ったオルハ・フォミチョバはジャーナリストのインタビューで涙をこらえるのに必死だった、とあります。「何年も歌ってきた役ですが、今日は初演を歌いに来たような気分でした。カーテンコールでウクライナ国旗を持って舞台に上がると、10分間のスタンディングオベーション・・・。この気持を言い表す言葉はありません」

とはいえ、通常の上演とは異なり、販売されたのは一階のみ、わずかに300席だったそうです。これはミサイルなどが飛んできた場合や空襲警報が鳴った場合、大人数だと迅速に避難出来ないという意味があり、加えてクロークが防空壕になるらしいのですが、そこに300人しか収容できないから、という理由もあるそうです。実際にウクライナの別の劇場ではミサイル攻撃を受け多数の死者が出ていることから、慎重に計画されたことは間違いありません。

オペラというのは日常を忘れさせる空間です。しかしウクライナの現実、キーウにおける上演の現実はというと、空爆されるかもしれないという恐怖を払拭できるものではないでしょう。そのような状況の中、劇場を再開した方々の勇気、心意気に賛同し、大きな拍手を送りたい。

公演は引き続き行われるそうです(ロシア作品は少なくともしばらく上演されない)。関係者一同につきまとう一抹の恐怖が完全に払拭される日、それがいち早く来ることを、遠く東京から願っています。