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ヘルシンキ・フィルのヴァイオリニストは高齢者に食料品をデリバリーする

オーケストラにはいま、仕事がありません。世界中で、ありません。ほぼゼロだと思います。これは大変な問題です。オーケストラで働く人達は、演奏家および事務方を含め、演奏の仕事がなければ収入がありません。寄付を募っているところもたくさんあります。オーケストラ運営にはともかく莫大な経費がかかり、寄付だけでなんとかなる、というわけには簡単に行かない。非常に厳しい。アメリカではオケメンバーの「一時解雇」が始まっています。

今朝目にしたニュース。ヘルシンキ・フィルのヴァイオリニストが、市内の高齢者のため代わりに買い物にでかけ、食料品や医薬品を電動バイクで届ける仕事をしている。

Teppo Ali-Mattila(テッポ・アリ=マッティラ)という名の第二ヴァイオリン奏者は、演奏が出来ないことは寂しいとしつつも、この仕事に従事することを幸せに思っていると語っています。

ヘルシンキでは高齢者の外出が禁じられているそうです。そこで同市では市内在住の80歳以上の住民ほぼ全員、約27,000人に電話をかけ、食料品や医療品に困っていないか、困っていたらデリバリーをするということを伝えた。

購入代はもちろん本人が払いますがデリバリー代は無料。配達員は荷物を扉の前に置くと、ドアから(というか相手から)2m以上離れ、十分に安全を確保してから渡す。ただ単に「買い物が助かるわあ」というだけでなく、この機会が、孤立して外出できない老人たちにとってほぼ唯一の、人と面と向かって会話をするチャンスだということなので、ものすごくものすごく意義があることだと思います。

ヘルシンキ・フィルは市のオーケストラなので、演奏家たちも市に雇われている。つまり公務員です。しかし今は全く仕事がない。なので、期間限定で「配置換え」の措置でこの仕事をしている、ということになります。またこれは強制でなく、やりたい、やってもいいよと言う人に手を挙げてもらっているとのこと。市としての目標は、解雇者を1名もださないこと、だそうです。

以上、この話はニューヨーク・タイムズ紙に4月17日付けのニュースを抄訳したものです。(内容に間違いがあったら指摘して下さいませ。)

コンサートが全くなく、浮いてしまった人材を活用しヘルスケアのために役に立てる、というのは北欧ならではとでも言うべきなかなかない発想だと思いました。

公のオーケストラにしか出来ないこと、と言われればその通りかもしれません。日本でも同じことを、と言いたいわけでもありません。オーケストラには団体によって個別の事情がありますし、美談だけでは済まされません。いずれにせよ、みんなで知恵を絞ってなんとかこの状況を耐え忍び、生き延びなければならないのだ・・・。

ロイターが上記ニュースを2分ちょっとの動画にしてYouTubeに公開していますので、以下ご覧ください。(本当は今朝、Facebookにこの動画をどなたかが日本語字幕付きにして下さっていた映像が流れてきていて、それを見ていたのですが、どこにいったか見つからなかったのです。ご存じの方お教えくださいませ)

あれっ、この映像にちらっとだけ映る指揮者は、だれ?あっ、それならスザンナ・マルッキな。・・・全然関係ない情報ですいません。

ヘルシンキ・フィルのシベリウス全曲↓