まさかのウルトラ技ドライブインシアター
●ドイツの若いピアニスト、アレクサンダー・クリッヒェルが明日ドイツのドライブインシアターでリサイタルを敢行するそうです。
https://www.facebook.com/events/226318108626375/
●イングリッシュ・ナショナル・オペラ(オペラを原語ではなく英語でやるところです。ロンドンです)は9月からドライブインシアターでのオペラ公演を実施するつもりのようです。こちらはより具体的に数字が書いてあって、車300台。バイクと自転車もオッケーにするそうです。まずは90分短縮版の「ラ・ボエーム」と60分版の家族向け「魔笛」だそうです。チケット代金たぶんまだ発表されていませんが、最初の公演は医療関係者など現場で働く人達は無料。
https://eno.org/news/eno-is-launching-eno-drive-live-a-series-of-live-opera-performances-that-audiences-can-safely-drive-to-and-stay-in-their-cars-for-the-experience/
「そうかドライブインシアターという手があったのか!」と皆が手をポンと叩いた・・・・かどうかはわかりませんが、まさかのドライブインシアター。隣り合わないし、なんなら窓を締め切ってもいいから(無意味)、ソーシャルディスタンスも楽々クリア!
ドライブインシアターってその昔、アメリカで流行ったんだよね。デートで使うんですよね。映画で見たよね。いやむしろ今でもそんなんまだあったのか!という印象です。すいませんでした。面白いことを考える人たちがいますね。
ピアノ・リサイタルの場合
クリッヒェルのケースの場合、プログラムはベートーヴェンとリスト。
ベートーヴェン:テンペスト
リスト:ヴェネツィアとナポリ
休憩
ベートーヴェン:熱情
リスト:ダンテを読んで
選曲にも注目。ニュアンス重視の弱音型の作品ではなく、勢いとパワー重視系の曲だ。野外ですから、ラヴェルの「悲しき鳥」とかそういう複雑な香りが漂う作品は辞めといたほうがいいことは皆さんのご想像に難くないでしょう。マイクとスピーカーはきっと使うだろうし。
ちなみにクリッヒェルはソニー・クラシカルというメジャーレーベルからCDを出している若手ドイツ人。いいピアニストですよ。音も大きいし(褒めています)ナイスガイ。
会場にはトイレがあるって書いてあるんですけど、休憩のときとか公演の前後にトイレに人が並ぶ可能性がありますね。密ですね。面倒だが対策が必要ですね。
会場はドイツ、サッカーでも有名なドルトムント近くのイゼルローンていうとこあたり(イゼルローンって『銀河英雄伝説』に出てくる名前やんけ!ドイツに実際に地名であるなんて知らんかったで、なあ!!)せっかくなんでグーグルマップでご覧ください。
オペラの場合
イングリッシュ・ナショナル・オペラについて言えば、前からドライブインシアターの構想があった、といいます。会場としてロンドン北部のアレクサンドラ宮殿というところを使うそうです。
最高責任者のコメントが奮っているじゃないか「これはちょっとした実験です」おいおい、実験でめちゃくちゃお金かかるけど大丈夫かな。「成功した英国の他の地域でも展開したい」・・・どうだろう。でもファミリー向けに特化すれば可能性はあるのかもしれない。あとやっぱりトイレ問題はどう解決するのか。密ですね。
日本で可能性があるだろうか
で、ドライブインシアターの日本での可能性ですが、リサイタルはともかく、ドライブインオペラってのは無理じゃね?っていう感じですね。広大で静かな場所を探すのも大変だし、そもそもですけど、ドライブインシアターの施設って舞台を想定してなくて多分スクリーンしかないから、そこに一から舞台、照明、演奏家の配置(ソーシャルディスタンス)を作って、しかも雨対策も必要だし、などと考えていくと資金面でかなり重く、現実的な香りがしません。
でも「ドライブインカントリーベアシアター」とか「ドライブイン・魅惑のチキルーム」なら行ってみたいかも。アロハ・エ・コモ・マイ!!
冗談です。
それに車には正面に窓ガラスがあるんで(オープンカーは除く)、音楽が正面から来ない。脇から聴くことになるので、 慣れの問題かもしれないけど奇妙な体験になると思うんですよ。映画の場合は映像=視覚で楽しむ要素もけっこうありますが、音楽の場合はやっぱり音がメインになりますから。
なので今後ドライブインシアターが一つのスタンダードになるかどうかと問われれば「たぶんない」「一時しのぎである」「ただしファミリー層限定ならありうるのかも?」というのが結論のような気がします。個人的に行ってみたいか、と問われれば、うーんあんまりかな、と思いますもん。ただそれは私がそう思うだけで、実際にどういう結果になるのかはわからないんで、ちょっとだけ興味はあります。
いま「音楽は止まらない!」などと無料の配信が世界各国で行われています。それはそれで意義があることなのかもしれないとは思いますが、そろそろ次のステップに移るべき頃だと実は皆さんも思っているのではないでしょうか。無料配信だけでは生活できるだけの収入は生まれない。
美談だけでは食っていけないんすよ。