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シカゴの夏のアカデミー、参加費返金しない通告。「お金ないから返せない」

夏の音楽アカデミーというものが日本でも各地で行われています。私はその昔アスペンという会社に勤めていた時、「いしかわミュージックアカデミー」の運営に下っ端として関わらせていただきました。夏になると金沢に行って音楽家を目指す若い子たちの集中的教育の現場に携わったのです。3回体験しました。

今はどうか知らないんですがあの頃は運営側の若手は大部屋に泊まっていました。みんなでビリーズブートキャンプをやってみたり、アースジェットでゴキブリの絶叫駆除体験をしたり、墓石屋でバイトしてる兄ちゃんの「生臭坊主」逸話選を聞いて真夜中に大爆笑したりと、大変いい思い出として残っている。

しかし各地アカデミーはコロナで今年はまず出来ないし、下手すれば存続そのものが問われるということにもなり得る。きびしい。

シカゴのサマーアカデミーで起こったこと

こういったアカデミーはもちろん日本だけでなく全世界で行われてきました。アメリカのシカゴでは「シカゴ・サマー・オペラ」というのが毎年夏に開催されているそうなのですが、コロナで今年は中止。で、すでに払った参加費について《今すぐの返金は無理。来年使える“かもしれない”クレジットとして預かるから何卒よろしく。返金希望者には来年5月1日以降に返金できる“かもしれない”》という通知が来たそうです。「we may be able to」。

“If an artist would like a refund, we may be able to complete this request after May 1, 2021, notwithstanding the continuation of the current COVID-19 epidemic or a different unforeseen circumstance.”

なぜかというと、それはもうご想像の通り「運営側にもお金がないから」です。生徒から支払われた参加費はすでに会場費、事務局スタッフの賃金、オーケストラにかかる費用なんかで大部分が支払われていたかなんかで回収できない。

これは払ってしまった生徒の顔面もマッツァオですわ。

一応、今年はオンラインでやる予定。来年も同じ内容で(ちなみにアルチーナをやるそうなんですが)、できるだけ同じ講師陣でアカデミーを実施する、希望者は無料で受講できますという事になっています。お金は返って来ないが、今年払ったお金を使って今年のバーチャルアカデミーと来年のリアルアカデミーは2回受けられるってこと。「来年は無理っていう人は2026年まで使えるクレジットとして取っておくね。」

・・・やった、2回参加できてラッキー!!っていう人もいるかもしれないけど、んなアホな!っていうのが普通の反応ではないですか。ちなみに参加費は2550ドル(約27万円)だそうです。ね、お安くない。自分が同じ立場なら・・・やっぱ返して欲しいっす。

「運営ちゃんとしろ」って言われるかもしれませんが運営側も厳しいんでしょうね、あちこちと交渉を重ねたんだがお金は戻って来ないよってなって(一部のお金については来年利用するということで振り替えてもらえる《延期対応》をしてもらえることになったようですが)、じゃあどうする?と考えた結果なのでしょう。リリースされたドキュメントにはFAQも作ってあって、何とか参加者の不安を和らげようとしている。

関係者それぞれに利害があって、誰の言うことも(たぶん)間違いではないのでしょうけれど、そして「みんなコロナで仕事が一斉になくてしんどい」って言われればそうなんですけど、「仕事がなくてお金が入ってこない」と「払ったお金が戻ってこない」というのとではまた話が違う。

来年タダで受け入れますから、来年が無理なら5年待ってますから、と言われても、今お金が必要かもしれないし、来年以降またこのアカデミーを受けたいと思うかどうかわからないし、そもそもこの団体がずっと存続するかどうかもわからない。ミニミニ版《銀行の取り付け騒ぎ》みたいなこともあり得る。

運営側は寄付とか助成金とかで何とかしたいと考えているかもしれないし実際なんとかなるのかもしれませんけれど、ならない可能性だってある。

同じくイベントを運営する身として他人事では済ませられません。