フランス西部、ナントの大聖堂で昨日火事がありました。もともとは1621年にジャック・ジラルデJacques Girardetの手によって作られ、5回に渡って修復、拡張されてきた大オルガン(パイプ総数5,500本)が完全に燃えてしまいました。ニュースでご覧になった方もおられるでしょう。
パリのノートルダム大聖堂の火事があったのは去年。あのときは幸いにしてオルガンはほぼ無事だったのですが、この火事でオルガンは灰燼に帰した。パイプが溶け、筐体は完全に燃えてしまった。そう、文字通りパイプが溶けてしまったのです。パイプオルガンのパイプはたいてい錫と鉛で出来ているので(木製のパイプもあったかもしれない)、火事があると簡単に溶けちゃうんですよ。むしろ木が燃えるよりも早く溶けちゃうのかも。
公式サイトにある大オルガンの詳細(仏語、写真なし):
https://cathedrale-nantes.fr/cathedrale/decouvrir/les-orgues-de-la-cathedrale/le-grand-orgue/
どうやら放火らしいという事なので、いたずらか、あるいは恨みを持った誰かが、ということになりますでしょうか。
燃える前と後の画像です。
ちょうど今朝カトリックに関する記事(神父の性的虐待とその告発)を読んでいたので、もしかしてそういう事が背景としてあったりするのかと考えるのは想像力をたくましくしすぎでしょうか。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0cde9be8155cebd9944fc4dcde6825c20f3a10b1
Diapason誌によれば既に数時間でオルガン再建のため4000ユーロ超の寄付金があったと記載されています。しかしオルガンは作るのがすごく大変で高価です。普通に大きなサイズのオルガンを作ろうとするとどれぐらいお金がかかると思いますか。名前の通りパイプがいっぱいある。燃えたオルガンには5500本あったとのことなので、サイズとしてはかなり大きい。軽く1億円を超えるではないかと思います。維持費も年間数百万円かかるかもしれない(もちろん失われてしまった古いものの価値はお金だけでは測れませんけれど)。4000ユーロではまだまだ足りない。いまコロナで経済が大変ななか、どれだけ寄付金が集まるのだろうか。
蛇足ですが、パリ・ノートルダム大聖堂のオルガニストを務めているオリヴィエ・ラトリー氏については、来年2月に来日。全国3公演が予定されています(来日が叶うことを願っております)。