コロナ時代ならでは。まさにコロナが元凶の笑えない話。
世界屈指の歌劇場の一つ、バイエルン国立歌劇場のオーケストラメンバーの一人が、事務局が規定するコロナ検査を拒否。演奏させてもらえず給与も支払われなかったため事務局を提訴した。まじすか。
https://www.br-klassik.de/aktuell/news-kritik/corona-tests-orchester-pflicht-rechtlich-100.html
ドイツにおいては「オーケストラ奏者のほとんどはテストを拒否しない、が、ほとんどのオーケストラにテストを拒否する人がいるのもまた事実だ」ということなんだそうです。これに関してドイツでは激論となっているとのこと。いやはや。ため息。
テストを拒否する人がオーケストラのど真ん中に座っていたら?・・・もちろんテストはリスクを低減させるだけのものであって、ワクチンのような劇的な効果を期待できるものではない。でも、テストを定期的に受けることで、集団としてある程度のリスク低減、ある程度の心理的な安心感が得られるのもまた事実。つまりテストを受けなければならない理由は「自分のため」だけではなく「他人のため」でもあり、ひいては「オーケストラや歌劇場全体の存続のため」である、という風に考えていけば、いやでも我慢してテストを受け入れざるを得ないのではないですか。
しかし歌劇場の存続なんて関係ない、自分の尊厳が第一、という人もいそうだなとはなんとなく想像はつきます。フリーランスの音楽家たちが苦しむなか、オーケストラメンバーとして雇用が守られているという状態はむちゃくちゃ恵まれていると感じるのですが、それとこれは別、と言うことでしょう。いやはや。すべてはコロナ。
そして今回焦点になっているのは「無給」の部分。テストの強要は人権侵害だ、人権を侵害しておいて無給とする措置はありえない、とかそういうことかと思われます。なおドイツの労働法ではテストを強要することは出来ないようです(間違っていたらすいません)。
どのような判決が出るか要注目ですが、この主張が認められると事務局側にとっては間違いなく大きな痛手ですね。なぜかというと、口には出さないけれど「テスト、やだ」と思っているメンバーが「テストを拒否して演奏できなくなってもお金もらえる(=さぼれる)」と知るやいなや、われもわれもと拒否し始めるだろうから。映画《千と千尋の神隠し》に出てくるススワタリ(まっくろくろすけ)を見たまえよ。ゴネ得やんか。いや、実際にはそういう行動に出る人の数は少ないと思いますしそう思いたいですが、絶対にないとも言えません。
いやー、困ったことだ。もしそうなったら事務局は ①テストを拒否した人でも演奏させる ②拒否した人は演奏させず別の演奏家をバイトで雇う、このいずれかを選ばなければならない。前者を選ぶと検査を受けているメンバーから大ブーイングが出るだろうし、後者を選択すると支出がいたずらに増え財布を圧迫するのみならずテスト拒否の続出という未来が待ち受けるかもしれぬ。
世界各国、あるいは日本でも似たようなケースが起こらないとは言えない。