クラシック音楽コンサートの主催がいま困難である理由を書いてみる

コンサート活動がいろいろと難しい時期です。我々もホールを借りて主催公演を実施してきておりましたが、当面のところ主催公演は断念しています。その理由はなんなのか。考えてみたら「まあそうっすよね」というものばかりかもしれませんけれど、とりあえずそのわけを書いてみます。

●客席数が半分になってもホール代は安くならない

いまコンサートホールは客席数を定員の半分もしくは半分以下に設定するようになっていますが、これは自主的にやっているわけではなく、そのように規制されているからです。ソーシャルディスタンス。

客席数が半分なら、(チケット収入は最大でも満席時の半分程度にしかならないわけだから)ホール代も半分になったりしないのとか直感的に思われるかもしれませんが、残念ながらそうはいかない。

ホール側としたら公演キャンセルが多発、「貸し館による収入」が激減し経営状況は悪化しています。それに、客席数が半分になってもホール運営にかかる費用は半分にはならないどころか、これまでより余計にかかっている可能性すらあります。

たとえば電気代などの光熱費やお家賃が半分になることはありません。ステージスタッフの数も半分ですむなんてことはありません。消毒液、非接触型の体温計、フェイスシールド、マスクなどを多数購入しなければなりません。レセプショニスト(客席案内とかをする人)などの数はむしろ感染対策のため増強しなければならないかもしれません。またコンサート時の運営どうするとかいうマニュアル、対応策をまとめなければならず、その実際のテストもしなければならず、中の人の仕事量としてはこれまでよりも多いかもしれない。

公演がそもそもないんだったらスタッフを一時的に解雇するかバイトにしちゃうか、給料を下げればという意見もあるでしょう。現実的に欧米のコンサートホールなどでは一時解雇や首切りをしまくっているところもあり、長引けば日本でもそうせざるを得ない日が来るのかもしれません。ただそうなると人材が流出してもう戻ってこないかも?と言うことにもなりますし、積み上げてきた運営スキルが崩壊するので「もうほんと無理、ごめん」という絶体絶命のピンチになるまでそれは避けたいと皆思っているはずです。

●券売のリスク

演劇関係でクラスターがありました。あのニュースでお客様の心理は再び冷えたと思います。Go Toの行き先も不安材料です。「クラシック音楽は座って静かに聴いてるから大丈夫へーきへーき」というお客様ばかりではありません。「怖い」、理解できます。

昨日いくつか用事があって久しぶりに都心に行きましたが、お茶の時刻に繁華街の和風お茶屋さんに入ったらお客さんゼロでした。店員さんとちょっとお話をしたのですが「うちのお客さんは高齢者が多くて、うつったら死んじゃうっておっしゃる方が多いんですよね。だから全然人来ないです」とのことでした。クラシック音楽のお客様の年齢層も高めなんで、わりと同じことが起こり得ます。

客席数の半分制限が解けたとしても、感染数が長く抑えられないとなかなかお客様は戻ってこない可能性が高い。客席の「安心感」がいまは欠如しているのです。

●ルールを守っていただけないお客様

昨日聞いた話ですが、「マスクは嫌いだからしない。だけどコンサートは聴きたい。入れろ。」というバトルが、最近あるホールの入口で勃発したそうです。まじかよ。

こういう人は極くまれですが、いるのです。こんな人が現れて暴れ始めたら主催側としていやすぎる。お客様の立場としても、こういう人が後ろに座っていてゲホゲホされたりなんかしますとやはり心理的にいやなのは当然のことでしょう。クラシック音楽のコンサートは指定席が多いですし、演奏中は静かに座っているのが基本です。長い曲ですと一時間以上座っていることもある。「危険を感じたら即移動、隣の車両へGO!」みたいなことはなかなかできません。

コンサートホールの換気能力って実は相当あるのでリスクは低い、というのは恐らくそうなんだろうと思います。コンサートでの感染なしの実績がずんずん積み上がってくれば、お客様の心理的ハードルも徐々に下がっていくと思います。しかし世の中の感染状況は拡大方向につき、そこに行きつくまでには時間がかかりそうな気がしています。

●実施されている公演も採算は取れていないはず説

上記のような理由もあり、いま実施されているコンサートにおいては、大多数の団体で採算が取れていないのではと想像しています。たとえばあるオーケストラが平均単価5000円でチケットを売ったとします。800枚売れたら400万円になりますけれど、出演料、広告宣伝費、ホール代などを乗せていくと間違いなくチケット収入だけでは赤字です。1回の公演で100万単位の赤字が出るはずです。

赤字なのになんでコンサートやるの?って言われるかもしれません。いまコンサートを開催している団体は、コンサートの灯を絶やしてはいけない、という理由で実施しているところが多いと思います。リスクを冒し、金銭的不利益を超え、長い目でみて、開催されている。本当にありがたいことです。業界の末端にいるものとしてご関係各位に感謝しなければいけないと強く感じています。

ですが、コロナがあまりに長引くとこれも厳しくなる。出演料を下げざるを得ない、チケット代金を上げざるを得ない、といった議論もさまざま出てくる可能性がある思っています。

・・・と、言った感じでしょうか。いつかまた来る春は遠くないと信じて耐えております。

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トミー

同じ「クラシック」とは言え、一番「迫害」を受けているのは合唱団やオペラ。ピアニストひとりのリサイタルはかなり復活。器楽に比べ朗読含め声のものはかなり不利、オケでなく室内楽やソロ、デュオは可能な範囲内。カテゴリ内にいろいろありますから。ひとくくりに「クラシック」とされるのは心外。

エガル

プロの公演に関しては採算を考えるとリアルと配信のハイブリッドなどの手段が必要かもしれません。アマチュアの場合は採算よりも安全性のみの配慮で公演は開けるはずですが、換気能力を明らかにしているホールばかりではないので、ホールの換気能力上で厚労省のガイドの一人当たり毎時30立方メートルを満たすために何人収容できるかの計算ができなかったりします。