業界人突撃インタビュー第11弾 マキシム・パスカル氏(指揮者)

やはり音楽は生で聞いてこそですから、多くの皆様に生の音楽をお聴きただきたいと感じています。そのためにはなんとしても感染症を抑えることが第一。聴衆のみなさまにおかれましても対策のための配慮、そしてご協力を引き続きお願いしたいと願うところです。ブラボー、時々聞こえるけど、今はほんとだめよ。ほんと。

さて、2週間待機を受け入れて来日、演奏する音楽家がポツポツと現れるようになってきました。感染症の状況がよくない欧米ではコンサートが激減、あったとしてオンラインの無観客コンサートぐらいなので、普段は多忙な演奏家であっても幸か不幸か時間をとることができる、という現実もあります。しかしそれでも、2週間という不便な時間があるのは大きな障壁です。

マキシム・パスカル氏は1985年生まれのフランスの指揮者。2019年の二期会のオペラ、黛敏郎《金閣寺》以来の来日となります。都内での2週間の隔離期間を経たのち、読売日本交響楽団、および名古屋フィルハーモニー交響楽団を今週、そして来週指揮することになっています(公演詳細はインタビューの下にあります)。今回来日し隔離中のマキシム・パスカル氏に突撃して、待機についてなど尋ねてみることといたしました。

―14日待機は大変不便だと思うのですが、今回どうして受け入れようと思ったのですか。

ところがけっこう楽しんでいます。スコアの勉強に集中することができていますから。私は日本をとても大切な国だと感じています。読売日本交響楽団、そして名古屋フィルとの仕事を失うようなことはしたくありませんでした。どちらの公演も、私がお届けしたいと願っているフランスの作曲家を含んでいます。

昨年2月、二期会の《金閣寺》のため東京で過ごしましたが、日本の人々が音楽を作り上げるやりかたにとても刺激を受けました。あの体験のあと自分がまるで違う人間に生まれ変わったかのように感じましたし、フランスの友人たちも、私が変わったと感じたようでした。ビデオゲームなど日本の文化も大好きです(いまは出来ませんけれどね)。

―出国時と入国時に検査があったと思いますが、陽性だったらどうする、といった恐怖はありましたか。陰性が分かったときの開放感はすごかったですか。

そうですね、でもそれほど心配していませんでしたから。

―音楽家は基本的に旅する生き物ですが、14日間どこにも行かず毎日狭い部屋にいなければならない、というのはどういう気分ですか。

先程も述べましたが楽しく過ごしています。むしろもうすぐ待機が終わってしまうことが悲しくもあるぐらいです。待機にあたって必要だったのは3つ。スコア、ピアノ、そして日本茶です。パリからスーツケースを2つ持ってきましたが、うち1つにはスコアだけが入っていました。またデジタルピアノを今回ご提供いただけたことには大変感謝しています。これがなければ耐えられなかったかもしれません。

―スコアの勉強以外、部屋での過ごし方を教えて下さい。毎日筋トレしているとか?

エクササイズ、したほうがいいとは思っているんですけれどね・・・。

―Facebookの投稿に日本のお茶が写っていました。日本のお茶は好きですか?日本食はお好きですか。もっとも好きな日本食を教えて下さい。お好み焼きですね?

日本茶は大好きですよ!それに日本食が嫌いな人っているんでしょうか?寿司、刺し身、ラーメン、うどん、そして・・・お好み焼き!!

―まじか、適当にお好み焼きって書いただけなのに。同じくFacebookに謎の「おどうぐばこ」が写っています。これに関して説明を求めたい。どこで見つけたのか。日本では小学生や幼稚園児が使うものですが、どういう用途で使っているのですか。

いい質問ですね。あの「おどうぐばこ」は金沢で見つけてすぐに気に入って買ったものです。あれには「付箋」を入れているんですよ。スコアに使っているんです。私はスコアに書き込みをするのがあまり好きではないんですよ。なんだか作曲家に対する敬意を欠いているような気持ちになってしまうんです。作曲家はたぶん、我々に知っておいてほしいことをすでに全部書いているはずなんです。ですから、何かを書き込まなければいけない場合、私は付箋を使うんです。大量にね。日本は付箋パラダイスなので、待機が終わって最初のリハーサルを終えたら文房具屋に行って付箋を買いたいと思っているんですよ。

―それはやばい。いや、すごい。アンパンマンの付箋とかをぜひブーレーズのスコアやなんかにバンバン貼っていただきたいですね。アンパン・ア・ラ・レポンですね。ル・マルトー・ソン・ドキン・チャンヌなどとしてもいいですね。槌はドキンちゃんロスなんすよ。意味不明ですいません。

14日待機をこれからする人たちへのアドバイスがあれば教えて下さい。

こんなにも自分ひとりでいる時間というのはめったにないことですから、自分の内面の声をよく聴いてください。

―聴衆のいるコンサートはいつ以来ですか。

パリのフィルハーモニーで10月24日にシュトックハウゼンのオペラ《光》の火曜日を演奏しました。2回目のロックダウンが始まる直前でした。チケットは完売したんですよ!

https://philharmoniedeparis.fr/fr/activite/opera/21477-stockhausen-dienstag-aus-licht

150人ほどの音楽家が参加していましたが、このプロダクションを通じて一人も感染者は出ませんでした。ソーシャル・ディスタンスのガイドラインに厳密に従い(たとえばリハーサルは小さなグループに分かれて行いました)、リハーサルの後にはかならずステージやリハーサルスタジオを清掃しました。

―それは素晴らしい。ご自身もアンサンブルを率いておられますが、今どういう状態になっていますか、そして今後の見通しはどうでしょうか。財政的にも大変なのではないですか。

ありがたいことに、フランス政府はフリーランス音楽家や芸術に対してさまざまな配慮をしてくれています。そのことにとても感謝しています。

―フランスでは15日から劇場が再び開けられることが決まったようですが、どう受け止めていますか。これは良いニュースでしょうか。

はい、とてもいいニュースだと思います。音楽には聴衆に聴いてもらい、楽しんでいただく価値がある、と考えます。東京芸術劇場、そしてその次の週に愛知県芸術劇場で聴衆の皆様にお会いすることをとても楽しみにしています。

ありがとうございました。

(了)

*本インタビューはハリソンパロット社(→HarrisonParrott)の協力のもと、11月27日金曜日にメール&電話にて行いました。

マキシム・パスカル
Twitter:https://twitter.com/secherletemps
Facebook:https://www.facebook.com/maxime.pascal.940

マキシム・パスカル出演情報

●東京公演
12月4日19時開演 東京芸術劇場
東京芸術劇場30周年記念コンサート

望月京:むすび
ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲 (ピアノ:反田恭平)
ドビュッシー:海
ラヴェル:ラ・ヴァルス
https://www.geigeki.jp/performance/concert219/

●名古屋公演
名古屋フィルハーモニー交響楽団 第485回定期演奏会
愛知県芸術劇場

シャブリエ:田園組曲
シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲第2番 作品61 (ヴァイオリン:辻彩奈)
ラヴェル:クープランの墓
 ベートーヴェン:交響曲第8番ヘ長調 作品93
https://www.nagoya-phil.or.jp/2020/1104131011.html

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