半世紀以上にわたりベルリン・フィルの楽器を運んだベルリンの楽器専門運送会社が破産

長期にわたるコロナ問題が経済へ及ぼす影響はじわじわと広がっています。

ベルリン・フィルの楽器運送などを担ってきた、ベルリン唯一の楽器専門運送会社、Kanitz社(1953年創立)が破産しました。レブレヒトが報じておりまして、ソース元も明示されておりましたので、見てきました。

https://www.morgenpost.de/berlin/article231444865/Orchesterspedition-Kanitz-Ende-einer-Berliner-Institution.html

同社公式サイト:
https://www.kanitz-orchestertransporte.com

コロナでツアーが全部キャンセルとなり、2020年の売上損失は数百万ユーロにのぼったとあります。カニッツ社では楽器輸送のほかにオフィスの引っ越しも手掛けてきたが、こちらも仕事は半減。持ちこたえられなかったそうです。社長イェルク・ノスター氏(70)のコメント「3月以降どうなるかは管財人次第だが、恐らく解散となるだろう」。

ドイツでは文化芸術に対して巨額の補償金が拠出されているようですが、同社に助成金は出ていないとのこと。日本でも補償の不平等が叫ばれますが、日本だけの問題ではありません。

同社は家族経営で、ノスター氏の娘夫婦と、孫も同社で働いている。設立者はノスター氏の義理の父だった。従業員は現在17名、これは会社の歴史上最も少ない。破産の知らせを告げた時、泣き出す授業員もいた。「彼らはすべての音楽家たちを知っていて、ファーストネームで付き合っている。我々は演奏者が楽器を演奏するとの同じぐらいのレベルで楽器を運ぶ情熱を持っている」

1956年よりベルリン・フィルのツアーを手掛けるようになり、ベルリン国立歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、ベルリン=ドイツ響ほかのツアーに携わってきた。楽器の輸送には高度な専門知識と技術が求められます。梱包だけしたらあとはそのへんの引越し業者に頼んだらオッケーというわけにはいかない。トラックには特別なスプリング、パッド、ヒーター、換気システムなどが備え付けられていて、それにかかった費用は数百万ユーロだとのこと。ベルリンで唯一の専門会社がなくなったということはつまり人材の流出、技術の流出が発生するわけです。コロナが終わった後また再建ができることを祈るのみです。

ミュンヘン、ウィーンにも楽器輸送専門の会社があり、当面はそこと提携するよりないとのことですが、ミュンヘンやウィーンでも、いやむしろ世界中で楽器輸送の需要は激減しているはずなので、各社相当厳しいはず。

また上記記事ではカニッツ社と提携していた楽器レンタル業者プライスラー・ミュージック社のコメントも掲載されておりました。「カニッツ社のことはベルリンのオーケストラにとって言いようのない損失だ」「もちろん楽器を運べる引越し業者は見つけられるが、特別装備の車や経験豊富な従業員をベルリンで見つけることは二度と出来ないだろう」。自社も危機的状況にある。いま借りている楽器奏庫は3月末に追い出される事になっていて(所有する楽器は約1700)、新しい倉庫は見つかっていないとのことです。

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