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主催者から10/28公演に寄せて

ベートーヴェンの専門家と目されているイスラエル出身のアメリカ人ピアニスト、ヤエル・ワイスが、ベートーヴェンのミサ・ソレムニスの中の「平和」のモチーフとベートーベンの32のピアノ.ソナタの1曲づつに委嘱作品を紐づけて平和のメッセージを発する目標とするプロジェクトを始めたのは2018年であった。

ワイスは、彼女がベートーヴェンを完全に手中に修めていると聴く者が納得する演奏で来月ベートーヴェンのピアノ・トリオ全曲のCDがリリースされる本当の意味で一級のchamber musicianである。

その彼女がベートーベンがミサ・ソレムニスの楽譜に自ら書き込んだ「心の内なる平和と現実世界の平和を求めて」と道元禅師の「三十二の彩雲」の言葉がワイスの中で一つになりこのプロジェクトのインスピレーションを得て、イスラエル人の作曲家に委嘱作品を初演したのは2021年の冬。

Weissは述べている“The piece is dedicated to the people affected by the ongoing tensions around the Gaza Strip and Southern Israel, two peoples who share a deep love for the same land”「同じ土地を愛する二人の異なる人々」と自身のプロジェクトのウェブサイトに記したのが2年前。

そしてまさに作日の朝、ガザの病院で起きた惨事に我々二人は茫然としてしまった。先程迄ワイスと連絡をとりあった。どうしよう。このコンサート、朝から風当たりが強くなって、are you prepared to go ahead? 結論は今こそmusic to heal the paingが必要なんじゃない?一時は「この様な状況下でイスラエル人ピアニストが平和云々と言ってイスラエル人の作曲家の作品を演奏するのは如何がなるものか」「本当におやりになるのですか」と言う意見を頂き、対応で忙殺されていた。

今年の2月のウクライナ人ヴァイオリニスト、セメネンコとロシア人ピアニストのググニンが共演した時も先月のウクライナ人ヴァイオリニストのウドビチェンコがショスタコヴィッチとプロコフィエフのプログラムの時も大変だった。リュビモフやググニンの苦労を見知っていれば、ここで怯むわけにはいかない。

まさにウクライナだけではなく「ガザと言う土地を愛するすべての人々」に平和がもたらされる様、我々が目を逸らさぬ様。音楽は「これっぽっちかも知れないけれど、その影響力は計り知れないと言う事を信じるのはワンおばちゃんだけではあるまい。