NYメトロポリタン歌劇場の伝説的ファン、亡くなる

ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場の伝説的存在がまた一人お亡くなりになったというニュースです。メトロポリタン歌劇場の伝説的なお客様、熱心にサインをもらいまくり、劇場で働く人全員から名前と顔を覚えられていたファンであったロイス・キルシェンバウムさん(88)が、3月27日にお亡くなりになったそうです。ニューヨーク・タイムズ紙。

Lois Kirschenbaum, the Ultimate Opera Superfan, Dies at 88
https://www.nytimes.com/2021/04/07/arts/music/lois-kirschenbaum-dead.html

「ロイス・キルシェンバウム、究極のスーパーオペラファン。88歳で死去」。この記事は大変大変興味深く、また考えさせられるものです。

昨日書いたブログは億万長者の話ですが、このロイスさんはごく一般的な人物のようです。なぜなら、いつも安い席を買っていたと書いてあるから。しかも休憩中はこっそり持ち込んだコーヒーとサンドイッチを食べていたともあるから(劇場で提供されるものは高額ですから)。そして彼女は生まれつきほとんど目が見えなかったのだそうです。地下鉄とバスを乗り継いでメトロポリタン歌劇場に通っていた。

こうして一般の人から億万長者まで様々な人が集うからこそ劇場という場所は面白いのだ・・・!!

さらに面白かったのが、ただサインをねだるだけではなく、サインを書いてもらいながら、次の出演は何でいつか、ということを歌手から聞き出すなどして、まだ発表されていない先のシーズンの演目と出演者のリストを作成し、仲間のオペラファンに情報として流していた、ということ。燃える好奇心と強靭な記憶力が重なって初めて為せる技だ・・・!

「彼女はインターネットがない時代のインターネットのような存在だった」と、あるオペラ歌手のマネージャーは語ったそうですが、こういう楽しみって、昭和とともに過ぎ去ってしまいましたなあ。私も子どもの頃、いろんなカタログとかを繰り返し繰り返し眺めるっていうことをしたけど、本当に楽しかったよなー。ま、時代が変わってしまったということですね。

そして、声をかけるアーティストも厳しく(?)選別していたようで、バックステージで彼女にサインをねだられることは歌手たちにとって一種のステータスになっていたという事も興味深いではありませんか。アプリーレ・ミッロは「ロイスからのサインのリクエストとは、すなわち祝福なのです」と語っている。ロイスさんは歌手たちからサインをしてもらいながら、本日のパフォーマンスについて、あるいは何年も前のパフォーマンスについて寸評をしていたと言いますから、まさに筋金入りという言葉がふさわしい。

最晩年はメトロポリタン歌劇場に通うことも少なくなっていったが、ラジオでオペラを楽しんだり、ヤンキースの試合を楽しんだりしていたとあります。

ルネ・フレミング「ロイスはメトロポリタン歌劇場のオペラファミリーの一員であり、愛すべき叔母のような存在だった。楽屋口で彼女に会えないと思うと、寂しい」

ロイスさんの集めたコレクションがどうなるのかはまだ決まっていないのだそうです。

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