サロン・コンサートを考える

ポンパドール夫人

日本で普通に使われている「サロン・コンサート」という言葉は、実は英国や米国ではあまり使われておらず、説明すれば何のことか通じる、というたぐいの言葉です。

英国でサロン・コンサートはSalon musicale が標準的な総称です。このうちフランス語の”soirée musicale”が夜に開かれるサロン・コンサートのことを指します。有名なところではまさに Schubertiade もこれに当てはまりますね。

お茶の時間ならthé musicaleとなり、もちろんお茶、コーヒーとお菓子が通常は出ます。Après-midi musicale は午後または昼下がりのサロンで、ワインやシャンパンにカナッペとお茶のサービスが普通です。これは19時には退出できる時間帯のコンサートで、夜のコンサートよりも短く、この後に参加者はおのおのレストランに行くなど、夜に何か予定を入れられるような設定で開かれるものです。

ヨーロッパでは、特に金曜日など、早めに仕事を終えて、友達と一緒に食事に行く前にカクテルがわりにちょっといい音楽とシャンパンを楽しんで、また夜をという風にFriday afternoonのひとときを楽しんでおられる方々たちがいます。サロン・コンサートにはシャンパンがつきものなのですが、お気付きになったかもしれませんが、至るところにフランス語がちらほらと出てきます。我々日本人が英語を必死になって学ぶのと同様、英国人はフランス語に子供の時から血道をあげるわけです。

「サロン」という文化はマダム・ポンパドゥールやマダム・ステールなどの18世紀にフランスの貴族からヨーロッパに広まり今日我々庶民まで広まり伝わってきているものです。その伝統と歴史の意味も含めて、MCSでもフランス語を催しの名前に使う頻度が多くなるのです。MCSの発祥の地メリルボーンは、ロンドンで初めてショパンがサロン・コンサートで弾いた場所でもあります。同地区はサロン・コンサートが頻繁に開かれていた地区で、今でも19世紀初頭と同じような景観が残されています。

サロンも生活に溶け込んでいてイギリス特有の週末によくある「コーヒーモーニング・コンサート」というものもここ40~50年開かれています。これは正午には会場を退出出来るように、一時間未満が原則で、おおむね50分前後。コンサートの前に前にコーヒーとクロワッサンが出る、というのが一番ポピュラーです。

夜のサロン以外は、コンサートの後にも予定を入れられる時間で企画されています。そしてお値段も夜のsoiree musicale 以外はそれ相応に懐具合を考慮されているので、常連になる人が多いのです。このお手頃感で気軽に良質の音楽と飲み物などを楽しめる、という環境で、初めて参加したという人も常連の人も歓談できると言う雰囲気が特徴です。

一般の生活の一部となって溶け込んでいる「ヨーロッパのサロン」と言う形式のコンサートが日本にも定着することを切に望んでいます。

来週、再来週のコンサートも英国のサロンをそのまま日本でという思いで開催するものです。

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