ステージへの不安をやわらげるために

暗譜の話をしてみたらすごいアクセスが来ましたこれは多くの皆様が感じていることなのだなと改めて思いました。つまり、演奏に対する不安や恐怖は皆様が抱えている問題なのだということです。

ステージに上がるのが楽しくてしゃーない、もう待てない!早くステージに登らせておねがい!!……という方は、おられるかもしれませんが少数派でしょう。ほぼ全ての方が「ステージは怖い」と思っているはずです。それは例えば……

●ウクライナからお越しのホロヴィッツさん:ステージを指差し調律師に向かって「フランツ、あそこは世界で一番孤独な場所だ」と言った。

●南米出身M.A.さん:開演前にひとしきり「弾けない、キャンセルする」と騒ぐ、そしてそれを周りの人間が必死になってなだめ、押し止めるのが一種儀式のようになっている。

●イタリアの歌手カルーソーさん:舞台袖で「歌えない!!」と言い始めるので奥様が舞台に突き飛ばす。

……といったどこまでほんまかわからないような様々の逸話が伝えられて来ていることから、そしてそれを私がばっちり記憶していることからも明らかでありましょう。人類の歴史は戦争の歴史と言いますが、舞台に限っても、人間の精神の戦争の歴史の連続の連続の連続なのだ!!ババーンッ!!!

1965年にホロヴィッツが12年ぶりに舞台にカムバックしたその日のことを知っているかい?ウラディーミル・サモイロヴィチはバッハ=ブゾーニのトッカータの最初の一撃で音を間違えるんや。開演直前、異様な興奮がホールを包んでいるのがわかる。ホロヴィッツ出てきただけでカーネギーの客席から「ブラボー!!」やぞ。ホロヴィッツはガクブルやったの間違いないからこのYouTubeの音源聴いてくださいよ:

ではどうすれば舞台の不安を和らげることが出来るのか。楽譜を見るという行為は確かに不安を少しだけ和らげる事ができます。でも、突然思いついて「今日は楽譜をみる!」と宣言するのは大変危険だ。なぜなら、楽譜を見て演奏するということに身体が慣れておらず、却って失敗リスクが高まるのです。楽譜を見ているのにも関わらず、自分がいまどこを演奏しているかわからなくなりパニックに陥る。これは楽譜を見ていない場合よりも自分的にはダメージが大きい。「見て弾いたのに」という自己嫌悪と絶望が交互にやってくる負のスパイラルである。っつーわけで楽譜を見るのであれば、日々の練習時から必ず見て演奏することを力強くおすすめしたい。

楽譜を見る以外、ステージ上で落ち着いて演奏するために何が出来る?いや、出来ることっていうのは基本的には自分をコントロールしようと試みることだけなんですが

深呼吸をする
自分は天才だと暗示をかける
ライブでは失敗するのが当然、だから録音というものが存在するのだねハハハと言い聞かせる
このときのために何百時間も練習してきたのだ、だから大丈夫と言い聞かせる
お客様は気が付かないから大丈夫、と言い聞かせる
深呼吸をする

ところで、これを言ってしまうと身も蓋もないのですが、演奏が止まりかけるような大事故であっても(その曲がどれだけ有名な曲か、どれだけ込み入った曲かにもよりますけれど)かなりの確率でお客様は気が付きません。だからこそ自分の演奏に自信のない人は、あまり知られていない曲を演奏したがる傾向があると私は思っています(なぜなら自分がそうだったから)。

みなさんが実践している、ステージ前の恐怖心を和らげる方法を教えて下さい。

私が最終的に出した結論「ステージには出ない」。これが最強。

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いけだのり

その日、その時、その場
その瞬間、そのピアノで弾いた演奏が、その演奏家の実力です。それに、普段弾いているように弾ける事はないですし、又、弾けなくて当然なのです。落ち込む必要もない。と思います。
本番の自分の演奏を、ただ受け入れる。
という事だと思います。これは、とてもとても苦い作業ですが、、、。