業界の裏側教えます。国際的な巨大音楽事務所と各国の音楽事務所。

おこもりの時期です。連日コロナのニュースを眺めて皆様も気分が晴れないことと思います。本日はそんな皆様の知識欲をちょっとだけ満たすかもしれないお話を一つ。業界の裏側っていうほどの話ではないかもしれませんけれど。

クラシック音楽は欧州を起源とする芸術文化ですので、どうしても我々日本人の目はヨーロッパ方面を主に向くことになるのですが、アジア圏でもクラシック音楽はビジネスとしてしっかりと根づいています。ヨーロッパだけでなくアジア各国にいろいろな音楽事務所があります。

で、アーティストたちは、ヨーロッパやアメリカの、一つの国際的な巨大音楽事務所だけに所属することもありますが(ワールドワイドでの契約)、それはごく一握りの人たちだけで、だいたいは、ヨーロッパはこの会社でアメリカはこの会社、とか、あるはもっと細かくイタリアはここでロシアは誰それで英国はどこ、中国はどこ、日本はどこ、とかそういう風に各国の事務所と契約します。

包括的な「ワールドワイド」の契約を音楽事務所と結ぶことの利点は何か。大手は重要な主催者に顔が利くから大きな場への露出が可能になる(=可能性が広がる)ということもあります。また自分のスケジュールを一括でそこが管理してくれるので、事務的にシンプルで楽なんすよ。しかしこのワールドワイドにも難点があって、それはまあご想像のとおり「細かく動けない」ということです。

どういうことか。世界中にコンサートの主催者は、それこそ星の数ほどあります。そして一口にコンサート主催者といいますけれど、主催者にもいろいろあります。コンサートホール、プロモーター、オーケストラ、オペラハウス、音楽祭、コンクール、音楽学校、音楽教室、カフェ、個人などですか(細かく拾っていけばもっと挙げられると思います)。オペラを手掛けるような巨大プロモーターから、一人で全部こなす個人の主催者までと、非常にその幅は広い。

ホール主催公演の割合はけっこう低い

あ、脱線しますが、世の中のコンサートホールで開催されているコンサートのうち、コンサートホールそのものが主催して行うコンサートの割合っていうのは、おそらく皆さんが想像されるよりも遥かに低いです。コアなファンならご存知でしょうが、コンサートホールのカレンダーを見ているだけでは、こういうところはなかなか見えづらいですね。ホールを借りてコンサートをしている主催者もたくさんいるわけです。これは日本に限らず世界中でそうです。

たとえばウィーン楽友協会やアムステルダムのコンセルトヘボウなんかで開催されているコンサートが全部、ホールの主催かというと全然そうではありません(ちゃんと数えてないから割合としてはわかりませんけど)。なので「ホールの主催公演に呼ばれる」というのはそれなりに重いし価値があることだったりします。また反対にウィグモアホールみたいに「基本的にはほぼ自分たちが主催している」ホールも、極くまれですがあります。

日本には名古屋に「全部主催」っていう業界の驚異、宗次ホールもあります。ソウジって読む人もけっこういますけどムネツグですからね。おぼえてね。CoCo壱番屋の創業者のむねつぐさんが私財を投じてお作りになった宗次ホールです。宗次ホールは年間300公演以上やっていて全部主催公演です。主催公演を一回でもやったことのある人ならその大変さがわかると思いますが、年に300とか400とかって、想像を絶する数なのであります。

話をもとに戻しますと、アーティストが国際的巨大事務所に所属すると、たしかにその事務所は世界中にネットワークがあり多数の主催者とつながっている。しかしながら、全てではない。地元には地元の主催者たちがいて、そういった主催者すべてとの連携は、どんな大手と言えど絶対にできないんですよ(例えば日本も大手事務所にとって難しいとされる国の一つです)。

それでもいいよ、という人たち。例えばいわゆるスーパースターとかですね、そもそもベルリン・フィルとかニューヨーク・フィルとかヴェルビエ音楽祭とかメニューイン音楽祭とか、「世界のSクラスのオーケストラやホール、音楽祭とだけ仕事をしていればそれで全てが回るしそれで十分」というアーティスト。この手の人達はそもそも通常の主催者が手出しできない高額のギャラなどが必要だったりもしますから、ワールドワイドでもよろしいかと思います。(こういうアーティストはなかなか日本に来てくれません。日本の優先順位は低いから。)

ただ、そこまで行けるスーパースターっていうのはそもそもなかなかいませんし、小さな仕事も拾っていかないといけない、あるいはそもそも小規模なコンサートもたくさんしたい、というアーティストも多いです。小さいコンサートだけが生きがい、みたいな人もいます。

というわけで、大手と契約をしてもワールドワイド契約にはせず、地域を区切って各国の音楽事務所とも契約をし、仕事作ってちょうだいー、と、代理人として活動してもらうケースも多いのです。その方が主催者ともその国の言語でやりとりできるし、コミュニケーションもずっと円滑でよろしいねということになります。

だいたいそんな感じです。もちろんこの世の中いっぱい例外とかはあるんで、今日書いたことが全てと言うわけではありません。

それでは今日もお買い物にはお一人でおでかけ下さい。

0 0 vote
この記事の評価
guest
2 コメント
古い順
新着順 高評価順
Inline Feedbacks
View all comments
いちきみ

ブログの更新いつも楽しみにしています。
ソウジって読んでました!こういうことって意外と気がつかずに過ごしてしまうんですよね。
大変な時が続きますが、またコンサートにうかがえる日を楽しみに待っています。
今度こそリュビモフのリサイタルにいきたい。

突然お邪魔虫

とても興味深かったです

そして読んでいて昔にショパコンで一世を風靡したStanislav Buninを思い出しました

ショパコン直後 あれだけ世界中で活躍した後は主に日本で活動しました
彼が日本を選んだということなのでしょうか?

後の彼の本にフランスの名前もしらないド田舎の小さなホールの雰囲気が好きで演奏依頼を断ったことがないと書いていたのもこちらのブログ内容と一致してるように感じました

彼がヨーロッパの大手と契約しなかった理由原因て未だにはっきりわかってないと思います
ブーニン自身が好きな土地で時々ピアノ演奏開いていければいいと思っていたのかなー?とこの記事見て思いました

的外れだったらごめんなさいw
突然失礼しました(*’▽’)