このタイトルを見れば、ワンおばちゃんの事かと思われてるかと想像致しますが左に非ず。 これはリュビモフのロンドンで、最初のサロンコンサートでのお話。 会場で丁度リュビモフがリハーサルを終えた。ワンおばちゃんはキッチンで氷出し煎茶の準備をしていると、何やら人の人体の一部が叩かれている音がする。何事かと思って急いで会場である隣の部屋にとんで行くと、リュビモフがアシスタントのクリスチーナがバチバチリュビモフを本気で手や顔を叩いている。これはジョークというよりかなり本気の様に見え、即真ん中に割って入りリュビモフを守る。「ごめんなさい、ごめんなさい」と連呼するリュビモフ
クリスチーナが昨晩から徹夜に近い状況で焼き上げたピロシキをこっそり会場の部屋の片隅の食べ物が用意されているテーブルの布とサランラップが覆われている下からこっそり人数分ピッタシのピロシキを6個か7個食べていて現行犯で捕まってしまったのである。 怒りで爆発したクリスチーナは容赦がない。本当にこれからコンサートだというのに手の甲が赤い。 「まあまあまあ…..」見事に大きなお皿の真ん中に空間が…. 「お昼にビーフストロガノフ用意してあるって申し上げましたよね」ワンおばちゃんがいうと「…..コンサートの前は何も食べれないので……」するとクリスチーナが「大嘘つき、ピロシキこんなに食べてしまって….何が、食べられないですって!一人1個なんです。もう貴方の分はありませんから」 その日コンサートの前の挨拶で「本日事件があり、残念ながらピロシキの数が足りません。お一人1個なのですが本日のアーティストはクリスチーナのピロシキがどこのピロシキより最高だといい、大好物になったそうです。そこでピロシキを諦めて下さったお客様はシャンパンのおかわりを無料で差し上げます」(最初の一杯は無料)リュビモフは終演後のリセプションでもひたすらテーブルのそばに立ってパクパクピロシキを頬張り、シャンパンの瓶はどんどん殻になって行きました。ワンおばちゃんは段々シャンパンが空になっていくので、足らなくなるのではないかと恐怖に苛まれていたところ、リュビモフはシャンパンが大嫌いで、赤ワインと日本酒が好きときて何とか最後までシャンパンももち「クリスチーナ・アナトリエーヴァのピロシキは世界一」と絶賛するので終いには二人は抱き合ってお互いに「世界一」と言い合いながら無事に幕が降りたのでした。ワンおばちゃんはその日、ピロシキもシャンパンも楽しめず余った氷出し煎茶をひたすら飲んでいました。リュビモフは演奏のみならず、「食べる」と言う事にも全身全霊を傾けてとり組んでいると言う事をその夜初めてのロンドンでの彼のサロンコンサートで知りました。 リュビモフという人は、彼の演奏と音楽の全てが、彼の日常とその生活に根ざしているという事実を熟知していて、それを大切にして守ってきたのだという事を知りました。 4月13日の日曜日に蒲田の 御園教会でリュビモフのサロン・コンサートを開催いたします。 残念ながらクリスチーナがいないのでピロシキはありません。 最初と最後は彼女のあの焼き立てのホンモノのピロシキを食べさせてあげたかった リュビモフが一人でのソロの舞台は今回の来日で最後にしたいと言うので、このサロンコンサートを会員以外の一般の方々にも開放いたしました。 本当に世界一のピアニスト 今までありがとう