ヴァイオリンの弦がもし切れたらどうなる?
パチンと飛ぶけれど、それで大怪我をしたという人はおられるのでしょうか。あまり聞かないだけで実は私、怪我したんです、失明したんです、なんていうケースもあるのかもしれませんね。というのも、チェコの有名なヴァイオリニストでヴァイオリン教師のオタカール・シェフチーク(1852-1934)は失明をして眼窩を摘出することになった。それは病気のせいだとされているけれど、弦が目にあたったのが原因だという噂もあるのだとか。
なるほど。
だから、その噂を否定するために実験してみるね!ということでチェコ・フィルのコンサート・マスター、ヨゼフ・シュパチェックが意図的に弦を切ってみることにした動画がこれ。スーパースローで。危険だからヘルメットを被って、手袋もして。
実際に弦が切れる動画なので苦手な方はお気をつけください。また楽器を壊すことはしていないそうです。
弦を巻き上げて行って、どれぐらい音を高くすれば切れるのか、どういう動きをするのかというのを調べる。目にあたったら危ないから、ヘルメットを被ってね。
そしたら見事にヘルメットに向かって飛んでいくからワオ!っていうお話でした。ガット弦でもやってみたそうですが、結果は同じ。7回実験して全部ヘルメットに切れた弦が当たっていて、しかも目のあたりに飛んでいっていたそうです。なんてこった。
とは言え、この実験ではヴァイオリンのペグを回し締めただけで切っているので、現実にはこの状態で切れるというシチュエーションはほぼないでしょう。実際に切れる瞬間にはだいたい弓が弦の上にあるだろうし、指もその切れた弦の上に乗っている場合が多いでしょうからまっすぐ顔に向かって飛ぶことはほぼほぼないかな、と。弦楽器奏者じゃないので確かな事は言えませんけれども。
しかし安全を考慮して演奏にヘルメット着用義務が課せられたら見た目もシュールになるし、何より演奏しづらくてたまりませんね。ヘルメットで演奏するチャイコフスキーの弦楽セレナードとか、それこそオー人事オー人事案件。
一時期ピアノの弦が切れたらやばいからっていう理由でピアノ協奏曲のときにピアノの先の奏者の前に仕切りのようなものが置かれたこともありましたが、あれも気がつけばなくなっている。事故が起こってからでは遅い!のかもしれませんし、今まで事故がなかったのは単にラッキーだっただけなのかもしれない。しかしどこまで安全面に配慮するのかというのは、なかなか簡単に結論の出せるものではないかもしれません。