Blog

【ニュース】今夜からのウィーン・フィルのカーネギーホール公演にゲルギエフは出演しない。

戦争。大変なことが起こっている。

ウクライナ情勢が不安定な中、ゲルギエフとマツーエフがウィーン・フィルとともにアメリカで演奏できるのか、という噂は飛び交っていた。不穏な空気もただよっていたが、戦争が勃発し、状況は劇的に変化した。そして先程、ゲルギエフ、そしてマツーエフはウィーン・フィルのカーネギーホール公演には参加しないことがカーネギーホールのサイトに発表された。

指揮の代役はヤニク・ネゼ=セガン。プログラムの変更はない(ピアニストの代役はまだ決まっていない。今日の今日いきなりとはいえ、ラフマニノフの2番を弾けるピアニストはアメリカに何人もいるだろう)。

※2/26AM8:59追記:代役はチョ・ソンジン。ベルリンから駆けつける。

https://www.carnegiehall.org/Calendar/2022/02/25/Vienna-Philharmonic-Orchestra-0800PM

ネゼ=セガンはニューヨーク・メトロポリタン歌劇場の音楽監督であり、代役として適任であることは言うまでもない。

ウィーン・フィルは政治と文化をわけて考えるよう訴えていた。それはある程度は正しいことかもしれないが、今回はそうもいかないだろう。なぜかというに、ノーマン・レブレヒトが極めて正しく指摘しているように、プーチンに近い存在である「ゲルギエフへの拍手はモスクワではプーチンへの拍手と受け止められる」からだ。だからレブレヒトは「パトロンたちが抗議するよりも前にカーネギーホールはキャンセルをする必要がある」とも書いていた。

ゲルギエフやマツーエフが政治的に中立もしくはプーチンに距離を置いていた、置くのであれば、議論はあるにせよキャンセルの必要はなかったかもしれない。だが現実には明らかにプーチン寄りであり、そこが問題視されることは十分に理解の及ぶところであろう。さらに言えばこれはゲルギエフやマツーエフだけの問題にはとどまらないかもしれない。今後はロシア人というだけで各国のコンサートホールで演奏を拒否される可能性もありうる、ということだ。「ロシア人アーティストの来日」に制限がかかる可能性もあるということを頭に入れておいた方がいいかもしれない。

とはいえ、ゲルギエフとマツーエフのキャンセルは誰の決断においてなされたのか、という点はいまのところ明らかになっていないようだ(そしてこれ以上何ら公表されないことも十分に考えられる)。