アルゲリッチはピアノのソロを演奏しないことで知られている。たぶん平成生まれの人はアルゲリッチがソロでぶっ飛ばしていた時代を知らない。
かくいう昭和52年の私も、アルゲリッチのソロはアンコールでしか聞いたことがないっす。いや、しかしアルゲリッチは1941年生まれなんで今年79歳なんですね・・・。ほんと、、、、なんか、、、、見た目は変わらぬとは言え、お年を召されて・・・・。ああ。ああ。
ちょっとだけ自慢させて下さい。アルゲリッチのブリュッセルのおうちには、不肖私め、2、3回行ったことがあります。終わり。この私も、若い頃はピアニストを目指した事があってだな・・・(略)。
アレクサンドル・ラビノヴィチとはアルゲリッチのおうちで、笑顔で握手したことがあるっていうのが私の人生最大の自慢の一つです。えっへん。・・・・だいぶ変な自慢で大変申し訳ありませんでした。平成生まれは(平成平成うるさいやつ)ラビノヴィチ知らない人多いかもしれませんが、どんな難しいオーケストラ楽譜でも「渡した30分後には暗譜でピアノで全部弾ける」というにわかには信じられない才能をお持ちの方なんですよ。
さて、昨日の夕方、アルゲリッチがソロを弾いた映像だよ映像だよ、という衝撃的な投稿が私のFacebookのタイムラインに突如として現れました。場所はハンブルクのライスハレ。慌ててツイートしたのがこれ↓で、皆さんの反応もかなりきておりまして、いやーやっぱりアルゲリッチ姉さんが弾くソロをみんな待ってるんやな、と涙がこぼれ落ちました。
おいアルゲリッチ様が25年ぶりにショパンのピアノ・ソナタ第3番弾いてる最新映像出てるぞやばいみんな観て。
— 山根悟郎 Goro Yamane (@GorouYamane) June 26, 2020
収録はハンブルクのライスハレ。昨日。https://t.co/YCpo0vvpgm
なお、いまでも観客の前では弾いてくれないと思います。これは無観客なので、っつってなんやかんやとルノー・カプソンとかが頑張って説得しくれたから弾いてくれたんではないかと想像いたします。さあ心して観られよ、79歳のスーパーお姉様の25年ぶりの演奏を。
椅子に座ってしばらく考えてるのも最高ですやん。いつもならすぐ始めるのに、やっぱりソロは普段よりもっとずっと緊張するんでしょうね。弾き終わった後、客席の方を睨みつけながら「ま、いまいちだけどこんなもんなんじゃない?」って感じの顔をするのも最高ですやんか。
アルゲリッチは左手で弾く
この曲のアルゲリッチの映像が出たのは初めてではないですか。冒頭部分ご注目下さい。左手使いますから。つまり、楽譜通りなら最初の5つの音は右手だけで弾くべきなんですよ。ソファレシファーって一気にね。たいてい手首を返してね。でもアルゲリッチは左手で弾く。ソファレシは右手、そして左手でファーを弾き、すぐ右手でそのまま押さえ直す。
そのむかし理由を聞いたことがあって(又聞きなんですが)、それは「このほうが音を外さなくていいんじゃん?」
ここがもともとあえて弾きにくい右手で弾くようになっているのはショパンにそれなりの意図があってのことだと普通は思いますよね。だから多分わざわざみなさん右手で弾くんですよね。日本のコンクールとか入試とかでこれやったらたぶん減点対象です。でも、難しかったら、音が濁るんなら、左手で弾けばいいじゃない。Pourquoi pas?
さすがアルゲリッチ様は違う。
だからみんなも明日から、恐れること無く、ソファレシファーのファーは、左手で弾こうな!そしたらかえって本番で緊張して弾けなくって、グシャって着地失敗するからそこんとこよろしく。