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ソウル・フィル、団員1名のコロナ感染で今月の公演を中止

ソウルもいろいろと大変です。感染が再び拡大傾向にあるようで、いろいろなイベントが中止に追い込まれているとか。韓国は日本より対策が厳しいというイメージがありますけれど、感染が落ち着く、手綱を緩めると感染が拡大する、再び締める、これの繰り返しになるのでしょうか。

主催者も観客も疲弊しますが、これがいまの「現実」か。

ソウル・フィルが今月の残り3公演の中止を発表しました。団員が1名感染したからだそうです。日本でもニュースになっている「サラン第一教会」っていうプロテスタント系の教会でのクラスター、

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020081700797&g=int

どうやらこの団員はそこでの感染者と接触があったようです。

https://slippedisc.com/2020/08/just-in-seoul-cancels-concerts-after-single-covid-case/

https://en.yna.co.kr/view/AEN20200818004100315?section=culture/arts-culture

http://www.koreaherald.com/view.php?ud=20200817000164

指揮者のオスモ・ヴァンスカ(今年から音楽監督)がそのあおりを食らっています。せっかく2週間隔離をしたのに(韓国は2週間待機で入国出来る)、ソウル・フィルの3公演がパー。本人も痛いし、ソウル・フィルも痛い。痛いっていうのは精神的ダメージもそうですし、金銭的にも痛いのであります。

コンサートが行われていない以上、本人にはギャラは支払われないでしょう。しかし既に来韓してしまっているし、エア代とホテル代はどうなるか?これは私の推測ですが、おそらくオーケストラ側が負担するのではないかと思います(あくまで推測です。契約によっては本人が払うってことになる場合もあります)。

仮にこの前提に基づけばこういうことになります。

金銭的ダメージを簡単に推測してみる

(1)ヴァンスカおよびヴァンスカの所属事務所にしてみれば、ギャラが支払われないということは3公演分の収入がなくなったということになり、痛い。ヴァンスカは1ヶ月近くをソウルで無為に過ごす結果になってしまった(コンサート以外で有意義な時間はあったと思いますので、完璧な無駄足ではないでしょう)。

航空券代と宿泊費はタダ(繰り返しますが、推測です)、つまりマイルを得て帰ることになる。ロッテデパートでキムチや韓国のり、お望みならマッコリを買って帰ることも可能。

(2)ソウル・フィルにしてみれば、ヴァンスカを呼ぶためにかかったエア代とホテル代(しかも2週間分余分に払っている!)、それがパーになるということです。

航空券はビジネス1枚だったとすれば50万円ぐらいか。宿泊代ですが、今回ソウル・フィルではヴァンスカと20、21、27日の3公演が予定されていた。最初のリハーサルが17、18、19の3日間だったとしたら、17日の15日前つまり8月2日には韓国に入国していないといけないってことだと思うんですよ。宿泊費は8月2日から27日まで、最低25日間分かかっていると思います。

ホテルは4つ星か5つ星の、広めの部屋(スイートルームの可能性もあり)でしょうから、一泊4、5万円するかもしれない。もっと高いかもしれない。仮に5万円として、5×25で125万円。

エア代とホテル代で総額175万円前後が一挙に無駄になったことになります。

オーケストラの痛みはそれだけではない。ホール代は返却されるのかどうかわからない。会場のソウルアーツセンターがどういう対応をとっているかは判りませんが、返ってこなかったら丸損です(振替え日をもらえるかもしれない)。

あとは広告宣伝費や公演開催に向けて動いていた事務費用、人件費などが丸々無駄になり、払い戻しにかかる作業(周知、返金作業事務費用)が発生し、返金手数料(銀行振込なら振込手数料、カード払いならカードの手数料)もかかる。

ご関係者の心労、想像するだけでため息が出ます。肩が凝ります。

どうなるティエリー・フィッシャー公演

そしてソウルフィルでは9月6日、10、11日にはティエリー・フィッシャーが指揮する公演が予定されている。2週間隔離のためティエリー・フィッシャーは既にソウル入りしているはずです。これが行われるかどうかも綱渡りみたいな感じでしょうかね。中止になったら大きなため息がまた出る。

ちなみに10、11日にはタベア・ツィンマーマン(ヴィオラ)の客演が予定されていましたがこちらはソリストと曲目が変更になっていて、恐らくツィンマーマンはスケジュール的に2週間の待機が出来なかったのであろう、ということがわかります。

海外アーティストを呼ぶということは、韓国においてもしばらくは大変なリスクを伴うことなのです。むしろ「来日できない」日本の方がまし、という風に考えることも出来るかもしれない。

憎しやコロナ。