Blog

ヤコヴ・パヴレンコ~サッカーからヴァイオリン~

ウクライナを代表するヴァイオリニストの1人アレクセイ・セメネンコに3世代のウクライナのヴァイオリニストを集めたコンサートをとちょっと言ってみた途端にセメネンコが「もう僕の頭にはすぐ名前が3人浮かんできた」と言ってヤコブ・パヴレンコの名前が出て来た。ワンおばちゃんとしては別に名前を出してとお願いしたつもりはなかったのだが、当然、D.ウドビチェンコの名前が出てくるのかと思えば、10代(昨年は未だ10代だった)だと言う。
あれよあれよと言う内にに話が決まりパヴレンコ本人と話す事に。「どうしてあなたは大きな国際コンクールに出ないの?」ワンおばちゃんは開口一番聞いた。
パヴレンコは答える「まだ時期じゃないからですよ」「そんな事ないんじゃの?だってヴァイオリンって早いじゃない」「人其々です。僕は始めたのが遅いんです。13歳の時から専門的に始めました。それまではサッカー選手になる為に、専門のギムナジウムがあるんですが、選手になる為の専門教育をする学校に行っていたんです。だからウクライナやロシアならば当然皆、音楽学校出身ですが、僕は違うんです。スポーツ専門学校です。入ってしまったのでもうそこを卒業する事にしたのですが、13歳からヴァイオリニストになろうと決めて、必死でした。
でもある意味では、スポーツって集中力を作ってくれるんです。本当にその瞬間瞬間が全てなんですよね、スポーツは。この話をすると、皆“えーっと“と言うんですよ。僕は損したと思っていません。遅すぎるって思った事は一度もありません。12歳の時、ある日、僕はヴァイオリニストになれる。なろう。なるのだと思ったんです。大袈裟に言えば雷が落ちたような感じがしました。考えたり、悩んだ結果じゃないんです。サッカー選手には向かないなと思ったとか、そういうのではなく、本当にある瞬間にそれが判ったというか。ですから時が来るまでコンクールには出ないのです。
今やっとコンクールの入り口が見えつつある時が来たような気がします。でもまだ見えてきたと言う距離ですね。スポーツをやってきたと言う経験は、こういう時に判断力とか「瞬時」と言う感覚を磨いてくれました。周り道をしたねとよく言われます。でも僕はそうは思えないです。これが僕の音楽だと思うんです」
彼の演奏は、不思議なことに10代や20歳とは思えない「いにしえ」の音色がして、例えて言えば「雷が鳴って大きな古木の株に落ち、木が割れたところからオイストラフやコーガンの時代の太い音色が出て来た」と言うふうに聞こえ、20歳という歳が不思議に感じられ「いったいこの子は幾つなの、誰かの蘇りなのと、ワンおばちゃんの経験が何も役に立たない大きな才能なのではないかと思ってしまいました。「これはもう年齢やコンクールだなんてもう如何でも良い。雷よありがとう。神様もっと雷を」と言う気持ちにさせられてこの度招聘する事になりました。しかもこのプログラムで。