7月18日、つまり来週の日曜にザルツブルク音楽祭2021のオープニングコンサートに参加するはずだったバーミンガム市交響楽団が出演をキャンセルしました。その理由は「待機」。オーストリアは英国からのアーティストを待機無しで受け入れるが、オーストリアから英国に戻る時に待機が求められるため、これによって参加が不可能になったということだそうです。待機が解決されなかったのはソーシャルディスタンスの問題もあるみたい。
つまり、演目がブリテンの《戦争レクイエム》だったから。・・・・ってこれ、ご存知の方も多いと思いますがむちゃくちゃでかい編成の作品なんですよ。こんなでかいのやるんか、ダメやろ、待機やろ、となったのでありましょう・・・。いやほんと。
というわけでオーケストラは急遽グスタフ・マーラー・ユーゲント管91名が代わりに演奏する。それでも足りない奏者についてはウィーン放送響から13名が参加する・・・。つまりオーケストラだけで104名。
さらに合唱もつくんやぞ。バーミンガム市交響楽団合唱団が参加することになっていたが、こちらはウィーン楽友協会合唱団に変更されることとなった。ウィーン楽友協会合唱団は非常に協力的で、バケーション(夏休み)を中止したり延期したりしてくれて、100名以上のメンバーで参加が出来ることとなった。指揮は当初の予定から変わらずグラツィニーテ=ティラ。
いやー、めでたしめでたしっていうかなんていうか・・・。なおどれぐらいのサイズかイメージがわかない方は実際の演奏をどうぞ。この映像はザルツブルク祝祭大劇場で、オーケストラはサンタ・チェチーリア管、パッパーノが指揮。
いやしかし、ですよ、こんなバカでかい編成の作品を、しかも合唱団100名超でやるとか、つまりステージ上は200名を超すとか、完璧にアフターコロナ仕様ってことですね。演奏する側は怖くないのかとも思いますが、怖くないから参加するのでしょう。怖い人は断ってるはず。すでに回復したか、ワクチンを2回接種して2週間以上経っている人も多いのか。いや、児童合唱もあるんですけど(ザルツブルク音楽祭児童合唱団)、児童は重症化しないから大丈夫、なのか・・・?これ日本でやったら保護者からブーってものすごくものすごく言われそうな気がする。
来週の会場は祝祭大劇場ではなくフェルゼンライトシューレなんで、合唱は舞台のうしろにある洞窟みたいなんに入って歌うんでしょう(フェルゼンライトシューレの舞台はこういうふうになっている)。いやさすがにそうじゃないと怖い気がする。
ちなみに戦争レクイエムは1962年にバーミンガム市交響楽団が初演しており、その意味で同オーケストラの参加が出来なかったことは大変残念だということだそうですけれど、こうしてヨーロッパ間でもギリギリになってツアー中止とかなっていることを考えると、なかなかオーケストラが日本に来る、というのは大変なことである、とわかる。
世界レベルでの待機問題が解消されない限り、オーケストラがまた自由にツアーを出来るようにはなりませんね。ワクチンが行き渡り、感染症の抑え込みが実現することでようやく待機問題は解決へと向かうと思うのですが、なるべくそれが早く実現することを望んでいます。これはクラシック音楽業界だけでなく、すべての業界の願いでもあります(ウィルスは忖度してくれないので本当にワクチンと特効薬が頼み)。
なお、タリス・スコラーズも同様の待機問題でザルツブルク音楽祭をキャンセル。代わりに出演するのはウィーンを拠点とするアカペラグループ「チンクエチェント」。