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ヴァイオリンでダンテの「神曲」地獄篇。

ヴァイオリンという楽器は小さくて茶色っぽくて、テカテカっと光っている、そういうイメージがはっきりと我々の頭の中にはあります。ピアノは黒光りしている、とか、金管楽器は金(銀)ピカである、とかそういうイメージと同じ。

それはもう、長年そういうことになってきたわけだから、パヴェル・シュポルツルが青とか緑とかそういう色の楽器で演奏するだけでなんとなくギョッと思ったりもするわけです。なんだかんだ言ってやっぱヴァイオリンといえば「茶色」なわけです。

しかしそのイメージをがっさり引き剥がしてくれるのがこのヴァイオリン。レオナルド・フリゴ選手(なぜ選手呼ばわり?)は、ニスを塗る前の楽器に黒いインクでペインティングを施してしまったのである!!うっはー!

そう、タイトルにヴァイオリンでダンテの神曲って書いてあっても、ヴァイオリンで情景を演奏するんじゃなくて描くほうなんすよ。これはなかなかない発想。

1993年イタリアに生まれ今はロンドンをベースに活動しているというこの人物は、ヴァイオリンにインクで精密な絵を描いちゃうという不思議なアート作品を次々と生み出している。もともとはヴェネツィアで美術修復の研究をしていて、フランスでの大聖堂の修復作業の経験もいかしながら、ロンドンに移住して弦楽器に絵を書きまくってきた、と。音楽と美術と文学を作品に仕上げているのだ。

http://www.leonardofrigo.com/

ほえー。

インクにもこだわりがあって、長い間研究を重ねた結果のオリジナルレシピにもとづく、オリジナルブレンドのほぼ黒いインクを使用。これまでの作品集には「7つの大罪」「ヴィヴァルディの四季」なんかがあって、既にイタリア、韓国、フランス、イギリスで展覧会が開催され成功してきたのだそうな。

このたび新しく完成させた「ダンテの地獄篇」はダンテ没後700年を記念して計画されたもので、4年がかりで完成させたそうであります。ヴァイオリン33ケとチェロ1ケ。一つの楽器が一つの章に対応しているのだそうです。うむ、すごい執念。

上の動画を見ると下書き無しで書いてるっぽくて、なかなかすごい。ぱっと見た感じどれも同じように見えたりもするのですが、じっくりと眺めれば大きな差異があるのに違いありません。ちょっぴり実物を間近で見てみたいわー。そんでもって誰か有名なヴァイオリニストに演奏してもらいたい。残念ながら実際の演奏動画はなさそう。実物が見たい方は、いまヴィチェンツァのパラディアナ聖堂に展示してあるそうなんで、ぜひ行ってみてください(8月末まで)。

ダンテの時代のヴァイオリン作品はないだろうから「ヴィヴァルディの四季」シリーズでヴィヴァルディを演奏してもらうっつーのはどうか。バロック・ヴァイオリンじゃないとダメだとかそんな固いことはいいっこなしで。