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クリスチャン・ツィメルマン、英国の所属事務所とトラブル

ピアニストのクリスチャン・ツィメルマンがおととい(2021年9月15日)声明文を出しました。英国の所属事務所とトラブルが発生しているとのこと。

https://www.diapasonmag.fr/a-la-une/a-barde-entre-krystian-zimerman-et-son-agent-34882

事務所側からはメッセージ等が出ておりません。両方の意見を見てからコメントすべきなのかもしれませんが、思ったことをちらとだけ書いてみようかなと思いました。ツィメルマンのメッセージは本人のFacebookページに英語で掲載されています。

https://www.facebook.com/KrystianZimerman/posts/402954744535537

内容は「意見の相違などによりこれまで英国と中国での代理人との関係を終了させなければならなくなった。また同社のウェブサイトから自分の名前の削除するよう要請してきたが未だに果たされていない(※9月17日現在削除されています)。もしかして今後の公演スケジュールなどに変更があったらお客様に大変申し訳なく思う」といったもの。やや強めの口調。

音楽というのはいわゆる非日常であって普段のしんどいこととかを忘れる力を持つものなので、こういう現実的な生々しい話題が出てくると我々はどうも目をそむけたくもなるわけです。しかし音楽を仕事としている人たちもいて、ビジネス的な会話、すなわち条件面や金銭なんかの話は必ずありますし、そこでトラブルになることもある。むしろけっこうあったりします(印象には個人差があります)。

「王様がいくらでもお金を出してくれるんで。無限にお金が出てくるんで。自分は好き放題させてもらってるんで。」とかならともかく(むしろ王様が文化芸術に湯水の如くお金を出したせいで財政が傾いたケースは古今東西、無数にあるんですけれども)、音楽家もお金やビジネスなどにまつわるトラブルとは無縁ではいられない。

音楽家は夢を売る商売=イメージが大切でもあり、理不尽だと思うことが現場で起こっても公式にはなかなか不平不満を口に出さないという人も多いかもしれませんが、人がみな同じ考えではなく、こうして実際に口に出す人もいるし、それも含めてのアーティストの個性といえる。

ツィメルマンという人は昔から完璧主義者で(不肖私も公演に関わらせていただいたことがありますが)自身の思い描く理想を目指して行動する方だと理解しています。とはいえ長く話し合ってきたことが示唆されているとおり、現実的な解決策を模索することも出来る方なのだと思います。

私は常々、結局仕事含め「人生は人間関係」だと思っています。音楽事務所とアーティストとの間も、人間関係。いいとか悪いとかではなく普通に「なんかあの人とはうまく行かない」っていうこともいっぱいあるし、反対に、多くの人とうまく行かないっていう方とも「なんやしらんけど自分はうまく行くみたいやわ」っていうケースもあります。さらには「昔はうまくいったが今はなんかダメかも」みたいなこともしょっちゅう。結婚生活と一緒で、時には喧嘩してうまくいかないこともある。どっちが悪いかなんてわからないし、どっちも正しい、ということもあると思います。

私自身も失言やミスを繰り返して来た人間なので、この件についても単に野次馬的に捉えるのではなく、問題の根底は何なのか何だったのだろうか、ということを想像し、そこから自分たちは何を学ぶことができるのかを考えたい。

トラブルが速やかに解決することを願っています。なおツィメルマンは日本が「大好き」という方でもあり(嬉しい)、今後の来日には影響がないと確信しています。