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「アウシュヴィッツ女性オーケストラ」最後の生き残りの一人が96歳で死去

アウシュヴィッツ強制収容所では女性のオーケストラが形成され、マーラーの姪っ子アルマ・ロゼが率いていたことを知っている人はそう多くはないと思います。恥ずかしながら私も本日まで知りませんでした。オーケストラのメンバーは保護され、少なくともアルマが率いていた時には誰一人処刑されることはなかったのだとか(Wikipediaへどうぞ)。

そのオーケストラのメンバーで、アコーディオンを演奏していたエスター・ベハラノさんが昨日、96歳でお亡くなりになったそうです。長く住んだハンブルクで。

https://www.abc.net.au/news/2021-07-11/esther-bejarano-auschwitz-survivor-dies/100284160

https://www.ndr.de/geschichte/koepfe/Holocaust-Ueberlebende-Esther-Bejarano-in-Hamburg-gestorben,bejarano224.html

ドイツの外務大臣ハイコ・マースは「人種差別や反ユダヤ主義との戦いにおける重要な人物が世を去った。彼女のバイタリティーと信じられないほどのストーリーに敬意を表する。大変に寂しい」とツイート。

1924年ドイツの左下端っこ(フランスとの国境あたり)ザールルイにうまれ、1943年4月20日にアウシュヴィッツ強制収容所に送還された。アウシュヴィッツ女性オーケストラに参加するまでは、重い石を運ぶ重労働に従事。オーケストラに採用された当時はピアノしか弾けず、アコーディオンを全く知らなかったが、正しい音を出すことが出来たのが彼女を救うこととなった。腸チフスにかかり病院に入ったときも他のユダヤ人囚人と同様放置されかけたが、オーケストラにとって重要な存在だったことから特別に薬が与えられ助かった。

両親と妹がナチスによって殺害されたことは戦後になって知った。終戦後の9月にイスラエルへ移住。15年近くそこで過ごしたのち、夫と2人の子どもたちとともにドイツに帰国(イスラエルは暑すぎた)。1980年代はじめに娘、息子とともに音楽グループ「コインシデンス」を結成し、ゲットーの歌、ヘブライ語の歌、反ファシストの歌などを歌っていた。

2014年に彼女が語ったという言葉が重い。

オーケストラは収容所の囚人のために演奏していたが、列車で到着した人たちのためにも演奏しており「彼らがガスで処刑されることを知っていたけれど、私にできたのはただそこにいて演奏することだけでした」。