ホロヴィッツの調律師として名を知られたフランツ・モアが今週月曜日になくなったそうです。94歳。ニューヨークで活躍した人というイメージもありますが、ドイツ人です。1927年うまれ。1956年からデュッセルドルフのスタインウェイ勤務、ニューヨークに移住したのは1962年のこと。
https://slippedisc.com/2022/04/horowitzs-piano-tuner-has-passed-away/
ホロヴィッツから絶大な信頼を受け世界中をともに旅して回ったことはよく知られていて、私もフランツ・モアの自伝は何度も何度も読みました。ホロヴィッツの数々のエピソードにハラハラしながら繰り返し読んだのでした。
ルービンシュタインやグールドの調律も手掛けていて、記憶を頼りに書いているので細かいところ間違ってるかもしれませんが、グールドのスタインウェイのオーバーホールを他人に任せたところ、あきらかにグールド好みではない仕上がりになってしまい、グールドもその楽器を悲しそうに拒否、最晩年の録音はヤマハになっちゃったんだよな、みたいな恨み節、とまでいかないまでも、後悔に近いことも書かれていたように思います。
ともかくこの本はめちゃくちゃ、いいえ、めちゃくちゃでは足りない、バチクソにおもしろいので、ピアノ関係者ながらもこの本を読んだことがない、という方がおられたら「今」「すぐに」読むことをおすすめします。強くおすすめ。いつ読むのか、今でしょ!!今だっ!!
ギンギンに冷えてしまったピアノを温めるために、ルービンシュタインと?だったかな?一緒に鍵盤の上に腰掛けてあたためた、とかいうエピソードもあって、おやおや、そんな体重かけても大丈夫なのかなと思ったこととか、あとアメリカに来たギレリスには、KGBかなんかの同行者がずっとギレリスを見張っていたところ、聖書をこっそり渡してギレリスに大感謝された話とかも、不思議と記憶に残っています。
25年ぐらいも前ですが、あるユダヤ人ピアニストにこの本の話をしたら「オー」と呆れた声を出して「もちろん知っているよ、キリスト教の布教の本だねあれは!」と返ってきて、ユダヤ教徒からはそのように見えることもあるのか、と私は静かに驚愕したのでした。そういうのもよく覚えています。
あと、日本に来たときのエピソードも前に書きましたけど、
この話も大好き。長い間お疲れ様でした。夢をいただきありがとうございました。