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ヴァン・クライバーン国際はロシア人ピアニストの参加を認める

ヴァン・クライバーン国際コンクールはロシア人の参加を認める決定を下しました。コンクールそのものは今年6月の開催ですが、明日からその予備審査がアメリカで開催される、その審査への参加を認めました。若者たちの未来をはばむわけにはいかないというわけです。

ステートメントを全訳します。

ロシアによるウクライナへの侵攻は非難されるべきものであり、心を痛めるものだ。我々はこの残虐な行為に断固として反対し、非難する。第16回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールに応募したロシア出身のピアニストは、ロシア政府の役人ではない。また参加を国家が支援するものでもない。したがって、私たちの名前の由来であり、インスピレーションの源であるヴァン・クライバーンのビジョンに照らし(若いアーティストを支援するというのは我々の使命そのものだ)、ロシア生まれのピアニストに、クライバーン・コンクールのオーディションを受けることを認める。

ヴァン・クライバーンは冷戦時代にモスクワで開催された第1回チャイコフスキー国際コンクールで優勝した。このストーリーは、超大国間が最も緊張した時代においても、芸術の超越性を証明するものとして世界中に感動を与えた。クライバーン自身が「我々はクラシック音楽が時間を超越した永遠のものであることを知っている。だからこそ、クラシック音楽に内在する永遠の真理が、世界中の人々の心のよりどころであり続けるのだ」と語っている。

来週開催されるクライバーン・コンクールのオーディションに参加する72人のうち15人がロシア出身で、うち8人がモスクワ在住である。これらの若く優秀なアーティストたちは、クラシック音楽の最大の舞台のひとつであるフォートワース(ヴァン・クライバーン国際コンクール)に出場し、自身の夢を実現するチャンスを得るため努力を払い、複雑な状況を乗り越えてきた。

彼らはこの機会のために、自分の時間の大半を費やし準備してきた。その苦労は並大抵のものではない。応募者の一人は今週このようなメールを送ってきた。「ヴァン・クライバーンが冷戦の行方に大きな影響を与えたことは、すべてのアーティストにとって素晴らしい手本となるはずです」。そしてほかの応募者はこう書いてきた「音楽が平和と愛の使者であるための機会を与えてくれることを祈ります」私たちは、参加者一人ひとりがそのように行動することを期待したい。

https://cliburn.org/official-cliburn-statement-regarding-russian-pianists-participating-in-screening-auditions-march-6-12/

それはそうとロシア人はいまアメリカに入国できるのか、とちょっと調べてみたところ、ヴィザは必要だしワクチン接種が義務付けられているものの、どうやら普通に入れるようです。この記事によれば、クライバーンの広報担当者のコメントとして「渡航の手配は済んでいて、ほとんどの参加者がアメリカに入国できると期待している」とあります。

パラリンピックや様々なスポーツがロシア(とベラルーシ)を排除するという判断をしていること、すなわち、才能ある若者の可能性と未来を断つという判断をしたことと真っ向から反対する決断です。

翻弄される若者に寄り添う気持ちは絶対的に必要。未来を担うのは若者だから。また、生まれた国や地域によって差別があってはならない。しかしこれらは単に口にすることは簡単でも、実行に移すことは容易ではありません。またヴァン・クライバーンがモスクワで勝利したのは冷戦時代。その時は大きな緊張を孕んでいたとはいえ、今とは事情がちがう。ウクライナで実際に侵略がおこなわれ、現在進行系でロシアとウクライナ双方に多数の死者が出ているという点は決定的に違う。

ロシア人が仮に優勝して自国で英雄視されるようなことになったら?本人が望む望まないに関わらず政治利用されることになったら?

若者の未来を摘むのはいけない。しかしこのクライバーンの判断が正しいのかどうか、私にはわからない。