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トゥガン・ソヒエフがトゥールーズとボリショイの両方を即時辞任

トゥガン・ソヒエフはフランスのトゥールーズ市長より、今月18日、および25日のコンサートに先駆けてウクライナの状況について意見を出すよう求められ、その回答としてトゥールーズおよびボリショイのポジション両方を即時辞任すると公表しました。

ロシア政府を非難しなければトゥールーズの職を失い政府寄りだと断罪される可能性があり、反対に非難すればボリショイの職を失うのみならずロシア国内の家族や友人たちに危険が及ぶ可能性がある。いずれの選択肢にも、おそらくきびしい結果が待ちうけていました。

不利益を被る人たち、危険にさらされる関係者を出来るだけ少なくすることを期待する、現段階での最善の解と言えるのかもしれません(そんなものがあればの話ですが)。ソヒエフの声明を読んで生ぬるいという人もいるようです。しかし、発言や行動によっては本人のみならず家族や関係者にまで広く影響が及ぶかもしれないことを考えると、これ以上踏み込むことは困難なのではないか、とも想像ができます。

https://www.nytimes.com/2022/03/06/arts/music/tugan-sokhiev-russia-ukraine-putin.html

以下、上記ソヒエフのFacebookに掲載された英文の和訳です:

多くの人が、私が自分の考えを表現し、今起きていることに対する私の立場を聞くことを待っていたのだと思います。

何が起きているのか、そして現在の出来事が私に引き起こした複雑な感情をどう表現すればよいか、考えがまとまるのに時間がかかりました。

はじめに最も重要なことを申し上げなければなりません。私は、どんな形であれ、紛争を支持したことはありませんし、これからも反対しつづけます。音楽家である私が平和を望んでいることに疑問を持ち、この地球の平和以外の何かを語ることができると考える人がいることは衝撃的であり不快なことです。

私のキャリアのこれまでの20年間、人類が直面した様々な紛争の間、私はいつも仲間の音楽家たちとともにあり、紛争すべての犠牲者に対する支援や思いを示し、表現してきました。これこそが音楽家たちが音楽を通じ表現することです。音楽で感情的なことを表現し、音楽で音楽を必要とする人々を慰めるのです。私たち音楽家は時として、音楽という国際的な言語を通じ、人間社会のどんな言葉よりも多くを表現することができます。

私はロシアという文化の豊かな国から来た指揮者であることを常に誇りに思っていますし、2003年からはフランスの豊かな音楽生活の一翼を担っていることも大変誇りに思っています。これこそが音楽の役割です。音楽は、異なる大陸や文化の人々やアーティストを結びつけ、国境を越えて魂を癒し、この地球上の平和を愛する人々に希望を与えてくれるものです。音楽はドラマチックで、叙情的で、愉快で、悲しいものです。しかし決して攻撃的ではありません!これこそが、素晴らしいトゥールーズのオーケストラとの実りあるパートナーシップによって証明されたものです。そしてボリショイ劇場の素晴らしいアンサンブルが、私がロシアやヨーロッパで公演を行うたび私に教えてくれたものです。トゥールーズでもボリショイ劇場でも、私は定期的にウクライナの歌手や指揮者を招いていました。国籍のことなど私たちは考えたこともありませんでした。一緒に音楽を作ることを私たちは楽しんでいたのです。そしてそれは今でも変わりません。フランスとロシアは歴史的、文化的、精神的、音楽的につながっています。私が愛する2つの偉大な国のつながりを私が誇りに思っていることを人々に示すため、私はトゥールーズでフランコ・ロシア・フェスティバルを始めたのです。このフェスティバルは、今日、トゥールーズの政治家や行政によって反対されています。なんと残念なことでしょう。そして彼らは、平和のために自分を表現することを私に求めているのです!私はこのフェスティバルが、政治的な言葉よりはるかに多くの架け橋となることができると信じています。

この数日間、私は自分の人生では決して見ることがないと思っていたものを目撃しています。ヨーロッパでいま私は選択を迫られ、どちらかの音楽家を選ぶことを余儀なくされています。

私は、どちらか一方の文化的伝統を選ぶよう求められています。
私は、特定のアーティストを選ぶよう求められています。
私は、特定の歌手を選ぶよう求められています。

まもなくチャイコフスキー、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチとベートーヴェン、ブラームス、ドビュッシーのどちらかを選ぶよう、私は求められるのでしょう。ヨーロッパの国であるポーランドでは、すでにロシア音楽が禁止されています。

私は私の仲間、アーティスト、俳優、歌手、ダンサー、ディレクターたちが脅され、不当に扱われ、いわゆる「キャンセル文化」の犠牲になっているのを目撃するのは耐えられません。私たち音楽家は、偉大な作曲家の音楽を演奏し解釈することによって、人類がお互いに思いやりと尊敬の念を持ち続けるための特別な機会と使命を与えられているのです。私たち音楽家はショスタコーヴィチの音楽を通じ、戦争の悲惨さを思い起こさせるため存在しているのです。私たち音楽家は、平和の使者なのです。私たちや私たちの音楽が国や人々を結びつけるため用いられるのではなく、私たちは分裂させられ、追放されているのです。

以上のような理由から、そして愛するロシアの音楽家と愛するフランスの音楽家のどちらかを選ぶという不可能な選択肢に直面させられたことから、私はモスクワのボリショイ劇場とトゥールーズ・キャピトル国立管の音楽監督の職を即刻辞任することにしました。ボリショイ劇場のアーティストやトゥールーズ管の音楽家と知り合うことができた私は、とても幸運な人間でしたと関係者全員に申し上げたい。2つの団体の素晴らしいアーティストたちと音楽を作ることは常に特権であり、私は常に「音楽家」として彼らの側にいます!!!!!!!

https://www.facebook.com/tugan.sokhiev/posts/645276676586416