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クルレンツィス率いるムジカエテルナのチャリティコンサートが急遽中止

鬼才指揮者テオドール・クルレンツィス率いるロシアのアンサンブル、ムジカエテルナはウィーン・コンツェルトハウスの主催で今夜(2022年4月12日)、ウクライナを支援するチャリティコンサート「希望と平和のためのしるし」を開催する予定になっていて、チケット売上から5万ユーロ以上(680万円以上)がすでに集まっていたそうですが、在オーストリア・ウクライナ大使の「ウクライナのためのチャリティコンサートにロシアのアーティストを巻き込まないでほしい」という要請を受け入れ、急遽中止になりました。

https://wien.orf.at/stories/3151589/

これはロシアやウクライナを始めとする世界各国の音楽家たちが、国境を越え、芸術や音楽が統一の役割を果たすことを音楽の力で表現する、という意図のもと企画されたものだったそうです。

クルレンツィスとムジカ・エテルナはプーチン大統領と密接な関係にあるロシアのメガバンクVTB銀行から資金提供を受けているという点も大きな問題となったことは間違いがありません。

この公演にはクルレンツィス、ムジカエテルナ・ビザンチーナそしてムジカエテルナ合唱団が出演する予定で、ウィーン・コンツェルトハウスのサイトによるとプログラムは「ヒルデガルド・フォン・ビンゲン、ギヨーム・ド・マショー、グレゴリオ・アレグリ、ジョルジ・リゲティほか」とあり、中世から20世紀音楽まで。

『2001年宇宙の旅』でも流れた最強のホラー曲、ルクス・エテルナも演奏する予定だったっぽいですね。

ていうか、ウィーンでの他の2公演(とハンブルクのエルプフィル公演)では合唱団のつかない曲、R.シュトラウスのメタモルフォーゼンとチャイコフスキーの《悲愴》をやるようなので、このチャリティコンサートのためだけに合唱団がロシアから来ていたということでしょうか。そうであるならば合唱団の旅費どうすんの、というあたりで揉めそう。

ウィーン・コンツェルトハウス側のコメントは「音楽で人はつながれると信じている。しかし政治的な側面が関係者全員にとって厄介なものであることも承知している」「ロシアのウクライナに対する侵略戦争によって計り知れない苦しみが有る時に、サンクトペテルブルグを拠点とするオーケストラの演奏が政治的な側面を持つことを無視することはできない。私たちはウクライナにおける戦争犯罪による絶望を理解、共有し、侵略をただただ非難する」。

チャリティコンサートとは別に、通常のコンサートが4月10日、11日(おとといと昨日)と、予定通り実施されたようです(ただし客席はガラガラだったという情報もあり)。また次のシーズンにも登場予定だったムジカエテルナのチケットは「オーケストラの独立資金が確保されるまで」一時的に販売が停止となったそうです。