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【業界ニュース】内田光子、事務所を替える

日本を代表する音楽家の一人、内田光子。拠点はロンドンで、日本人ではありますが世界のトップサーキットを突っ走ってきた偉人であります。個人的にお会いしたことはありません。でもそりゃあもうずっと最先端を突っ走ってきた方です。畏敬の念を持って、その活動を後方から注視しております。はい。

このたび本日付けで内田光子の所属事務所がかわったということで、大変驚きましたが、同じロンドンの、ブティックからブティックへ。もっと具体的にはVictoria RowsellからKathryn Enticottへ。

ブティックという言葉がわからないですか。ブティックって、普通はどういうイメージですか。デパートに対して、たいへん小さな、でもこだわりの凝縮されたお店、というイメージではないですか。

それと同じことです。デパートのように大きな音楽事務所、いわゆるアスコナス・ホルト、インターミュジカ、IMG、ハリソン・パロットなどの巨大ファーム、日本で言うところのカジモトやジャパン・アーツと呼ばれる大きな事務所のように百貨店型の大型店ではなくアーティストを厳選、よりこだわったラインナップの小型の事務所、それをブティック・エージェンシーと呼びます。1名から数名程度でオペレーションしている。

ブティックの強みは、需要の大きなスターアーティストが数名いさえすればそれだけで事務所が回せるという極めて省電力なところです。営業活動も、数名に限定すればいいから楽であり、むしろアーティストが引く手あまたの場合はジャンジャンジャカジャカお問い合わせがくるため、ズビズバお断りをしなければならないという、非常に「うらやましかー」な状態に突入出来ることです。スターモードやね。ちゃんちゃんちゃんちゃちゃんちゃんちゃちゃんちゃん・・・・・・。

所属するアーティストの側も、自分は大事にしてもらえている(他にアーティストが少ないから当然、濃いマネージメントが出来る)という安心感があります。

またその反対にブティックのリスクは、アーティストが一名抜けただけで大ダメージを受けるということです。売上ががたっと落ちる。下手すりゃ店をたたまなあきませんのちゃうか、みたいな。それがこわいところです。アーティストとの関係がうまく行っているときはいいけれど、世の中から「離婚」という言葉がなくならないのと同様、マネージャーとアーティストの関係も破綻することがままある。

一時期ロンドンでもブティック・エージェンシーがもてはやされた時期がありますが、今は落ち着いていて、むしろ大型エージェンシーへの揺り戻しのようなものも起きている、と仄聞いたします。苦しんでいるブティックもけっこうあるのだとか。しかしこれは先が読めませんね。果たしてまた5年10年経ったときにはそのパワーバランスはどうなっているのだろうか、と思います。・・・・やっぱり後方から私は注視いたします。そもそも東京でも端っこに住んでますしぃー。

ちなみにVictoria Rowsellという人はヴァン・ウォルサムという、いまはもうない大きな事務所にいて2005年に独立した人。15年だ。かなり長く自身の会社を率いている。一方のKathryn Enticottはインターミュジカからスタートしてブロードウェイ関係の方に行き、それからIMGアーティスツへ。2014年独立。こちらは勢いのある事務所だと個人的には感じています。抱えているアーティストもすごいから。ここを見てください。ね。納得でしょ。