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ロンドンの名ホール、再開への道

ロンドンにはウィグモアホールという名前の、室内楽やリサイタルを専門にしている552席の小ホールがありまして、もうそれは名門なんで、世界のトップスターが集まって演奏してきてます。しかもわけわかんないことに年間400公演以上やってるんですよ。昼夜2回回しは常時だし、3公演やったりとかもある。もちろん全然別の公演だったりするんで。しかもほぼ全公演が主催公演。どうやって回しているのか、謎すぎる。1人で3、4人分ぐらいの仕事してるんちゃいますか。

このコロナで当然ここも閉まっているわけですが(無観客ライブは実施)、ここに関するニュース記事がテレグラフ紙に先月末でました。ついに観客を入れてのコンサートシリーズを再開。第一弾として、9月13日より11月1日までの間に80回公演をするのだそうです。

https://www.telegraph.co.uk/music/classical-music/john-gilhooly-wigmore-hall-must-give-musicians-platform/

https://wigmore-hall.org.uk/news/autumn-series-news

1ヶ月半なのに80公演ある。そう、ウィグモアホールだから。

主な出演者も公式に出てますんで、そのままコピペしちゃいますけど。ABC順に並んでいます。

Apartment HouseArditti QuartetKit Armstrong (piano); Mariam Batsashvili (piano); Florian Boesch (baritone); Frank Braley (piano); Gautier Capuçon (cello); Renaud Capuçon (violin); Marianne Crebassa (mezzo-soprano); Sabine Devieilhe (soprano); Mahan Esfahani (harpsichord); Gerald Finley (singer); FretworkMartin Fröst (clarinet); Christian Gerhaher (baritone); Jess Gillam (saxophone); Martin Helmchen (piano); Kaleidoscope Chamber CollectiveLeonidas Kavakos (violin); Elizabeth Kenny (lute); Katharina Konradi (soprano); Igor Levit (piano); MILOŠ (guitar); The Nash EnsembleFrancesco Piemontesi (piano); Rachel Podger (violin); Quatuor DanelQuatuor ÉbèneJeanGuihen Queyras (cello); Sir András Schiff (piano); Schumann QuartetFrank Peter Zimmermann (violin);

https://wigmore-hall.org.uk/news/autumn-series-news

座席数はもちろん制限されていて、なんとわずかに定員の10%、56席限定。まじですか。これはきつい。収支がきつい。しかも公式を読みますと、今後の状況によっては“プランB”つまり「無観客」開催もありうると書かれています。いずれにせよ無料のライブ中継あり。

ライブ中継ありとするのは、いろいろ理由はあるでしょうけど「無観客となった場合でもアーティストにギャラを支払えるようにするため」という理由も大きいと想像します。誰にも聴かれてないのに演奏するのは意味ないし、それでギャラを貰うのも気が引けるし。

ちなみにギャラはコロナ前と同レベルの規定金額がとりあえず維持されているそうで、この80公演で40万ポンドを軽く超えるということです。均しますと一公演あたり70万円以上がギャラとして支払われている計算です。なかなか生々しいですな、うん。大スターには多く支払われ、そうでない人には少ないんでしょうけど。

感染症対策として

●紙のチケットは発行しない。プログラムも印刷しない。
●入り口で体温検査、消毒液。
●入場時間をずらす。
●コンサート前後に客席の消毒。
●休憩時間なし。
●その他政府のガイドラインに準拠。

莫大な赤字

で収支はどうなってるの、って思いますよね。もちろん莫大な赤字です。そもそも再開するまでのこの5ヶ月ちょっとの間、毎月約50万ポンド(現在のレートで約6900万円)のチケット収入を失っている。普通に5を掛けたらこれまでに3億4500万円ぐらいの減収。

生き残り対策としてスタッフの半数が一時解雇され、250万ポンド超あった資産に手が付けられた。政府関係からの補償金として15万ポンド、あとファンドレイジング。ファンドレイジングについて言えば「まずは食べるに困っている人たちを助けたい、それからウィグモアホール」となるそうなので、やはり簡単ではなかったとのこと。

それにしてもこのファンドレイジング、めちゃくちゃ効いているんでしょうね。じゃなかったら数字が全然あわない。ファンドレイジングの凄さよ・・・(集める能力+払おうっていう人たちの数量が半端ない)。

とは言え、ウィグモアホールにとっても、引き続き厳しい状況が続くことは間違いがない。