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ロンドンの新コンサートホール建築計画、破棄される

おそらくそうなるのではないかと個人的に思っていたのですが、なんて書きますと完全に後出しジャンケンになりますが、ロンドンで計画されていた新しい音楽ホールの建築計画が破棄されました。理由は、もはや誰の目にも明らかなとおり「現在の前例のない状況」。コロナが悪い。コロナを理由に建設反対派が押し切ったという感じかと。

https://www.ianvisits.co.uk/blog/2021/02/18/barbican-centre-upgrade-as-centre-for-music-is-cancelled/

https://www.architectsjournal.co.uk/news/barbican-set-for-major-renewal-as-diller-scofidio-renfros-centre-for-music-scrapped

建築にかかる費用は2億8800万ポンド(約425億1700万円)と推定されているのに対して、ロンドン市は680万ポンド(約10億400万円)、つまり総額のたった2%ちょっとしか用意が出来ない。残り415億円ちょいは民間投資とか寄付とかでよろしく。・・・・ってそんなん集まるかー!!ということだと思われます。はい。ごもっとも。

計画されていたホールはすでにデザインも発表されていました。動画もあります。

すなわち、それなりの、と言うかむしろかなりの金額が発生していたと思われますが、撤回ということで損切りせざるを得ない。

このホールは英国の指揮者サー・サイモン・ラトルがロンドン交響楽団の監督に就任する際の条件の一つだったものです。そのラトルも23年でロンドン交響楽団を辞めてまたドイツに行っちゃうし。

ラトルも言っているとおり、ロンドンにはオーケストラ用のまともなコンサートホールがない!というのが皆の共通の理解でしたが(偉そうに書いていますが私は英国に行ったことがないので伝聞なんですけどね!)、それは今後も解消されないということになります。

代わりに今ある建物を、つまりバービカン・センターをアップグレードする、今年の後半にコンペを開始、ということになったのだそうですが、果たしてどういう風にアップグレードされるのでしょうか。いくら頑張ったってホールの音の響きっていうのを劇的に変えることはできませんので、おそらく音響はよろしくないままかと思われます。

あるいはPA(マイクとスピーカー)を使うというアイデアもあります。クラシック音楽というと生音で聴く、というのがだいたいの常識につき、スピーカーを使用するということに対する心理的な障壁は高いのですが、世界には堂々と「マイクとスピーカー使って素晴らしい音響を生み出している」と謳っているホールもあるんやで。例えばノルウェーのローゼンダール音楽祭で使われている建物。詳しくは以下ページを見てきて下さい。「すげーわ、未来やわ」ってレイフ・オヴェ・アンスネス(著名ピアニスト)もコメントしてますから。

https://www.baroniet.no/en/rosendal-festival/about-the-festival/

この建物で演奏したことあるよ、というノルウェー人ヴァイオリニストに直接話を聞いたことがあるのですが「音の響きは全く自然で素晴らしいクオリティだ」と言っていましたので、バービカンの音についても、そういう方面でアップグレードする、という方法も考えられなくはありません。装置がよく技術者の腕もいい場合、スピーカーを使っているということは言われないと気が付かないし、むしろ言われてもわからない、ということもあるんだそうです。

現実的に新しい建物が無理なら、こういう解決策もありなんじゃないですか。・・・ってあまり積極的には賛同していただけないかもしれませんけれど。