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【訃報】クリスタ・ルートヴィヒ(93)、世界屈指のメゾ・ソプラノ

© Salzburger Festspiele / Marco Borrelli

クリスタ・ルートヴィヒ、93歳。世界屈指のメゾ・ソプラノ歌手。ウィーン近郊のご自宅にて先週の土曜日に天寿を全うされました。ご冥福をお祈りします。

https://www.nytimes.com/2021/04/25/arts/music/christa-ludwig-dead.html

1928年ベルリンうまれ。父親がテノールで母親もメゾという歌手の家族。なお両親はアーヘン時代のカラヤンのもとで歌っていた。

神様のように怖い指揮者カール・ベームに認められて1955年ウィーンの歌手となり、1962年にはウィーンの宮廷歌手に選ばれています。弱冠34歳でこの称号を得るというのは大変なことなんだそうです。

ところでこの宮廷歌手っていう言葉はご存知ですか。私がこの言葉を知ったのは15年ぐらい前ですが、よく覚えています。あるアメリカ人のテノール歌手と浅草の今半でしゃぶしゃぶを食べながら会話していた際に「私は宮廷歌手なんだ」と誇らしげに語ってくれたので「んーなんぞそれは」と思った若気の至りテヘペロー、って言うか単なる無知の知さんだね君は、的な話なのですが、その時は、うむむ、たいへん名誉な称号のようであるな?と思っていました(今でもそんな感覚でいますが)。

そのアメリカ人歌手は、私が当時勤めていた音楽事務所をやめるとメールをした時にバカでかい字でCongratulations !と返事をくれたので、嬉しくなったものだよ、私は(倒置法)。なのでそれ以後私もそれをまねて、誰かからなにかおめでたい連絡が来たときはフォントサイズを最大にして「おめでとうございます!」と書くことにしています。きっと笑顔になってくれているはず。みんなもやってみてね。笑顔のおすそ分けや。

Wikipediaによりますとオーストリアの宮廷歌手っていうのはこれまでに少なくとも158人いるということになっていて、現役ではロベルト・アラーニャ、アンナ・ネトレプコやステファン・グールド、エリーナ・ガランチャなんかの名前があります。ドイツでは名誉だけだが、オーストリアでは宮廷歌手になればどうやら生涯年金も支給されるそうです。

この年金という単語、《歴代作曲家ギャラ比べ》の調べものをしている時に何度も行き当たりました。私はぼんやりと「現役を引退した後一生もらえるのが年金」とこれまでずっと思いこんでいましたが、現実には「今すぐ」とか「何年かだけ」みたいなものもあって、また辞書で見ると「一定期間あるいは終身」という記述もあったりしまして、また少し私の脳にはシワが増えたと告白せざるを得ない。たぶんオーストリアの生涯年金っていうのも、選ばれたらすぐに、政府が崩壊などしない限りずっともらえるのでしょう。どんだけもらえるのかは、わからない。

あんまりご本人の話とは関係がないところを長々と書いてしまいました。YouTubeでその素晴らしいお声を。

「(歌手の声とは)生卵のようだ。いっぺん壊れると、それはもう壊れたのだ」(=もとには戻らない。自身の声について) ― クリスタ・ルートヴィヒ