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ワーグナーの手紙、オークションへ。開始価格は2000ユーロ(約26万円)

ワーグナーって、どの時代の人かご存知ですか。どんな作曲家と同世代か、でもいいんですけど。

私は数字に弱いし暗記力もないし教養もないんで、なんとなく「ワーグナーってブラームスなんかと比較されてたんだからブラームスと同世代ぐらいの人」って、何度も生年を目にしていたにも関わらずぼんやりわりと最近まで思っていましたけど、いやいや、ぜんぜんぜんぜん。思い込みって恐ろしい。ふざけた意識を持っていた曖昧な日本人の過去のわたしをきつく叱ってやりたい。申し訳ありませんでしたペコペコ。

あんな、ワーグナーってな、1813年生まれやねん(急に馴れ馴れしくなるやつ)。

げぇっ。

ブラームスより20歳も年上やん。なんとなればメンデルスゾーン(1809年うまれ)ショパン(1810年うまれ)、シューマン(1810年うまれ)とかとほぼほぼ一緒やん。最初はちょっと敬語でも気がついたらタメ口でオッケーレベルの誤差ですよこれは。大変なことだ。

あとはリストとの関係ね。ワーグナーはフランツ・リスト(1811年うまれ)には大変世話になった上に、リストの娘さんと略奪婚してるんで、リストよりも遥かに下の世代やろと(やっぱりぼんやりと)思っていたら、まさかの同世代ですよ。

自分の娘が、自分と同い年ぐらいの男性と結婚したい、って言ってきたらさすがにちょっと気まずいような気もする(しかも略奪婚。しつこい)。いや、世の中はダイバーシティだから、恋愛も自由だ。多分。ハンス(妻を奪われた悲しい人)はさぞ無念だったろう。ああ。ピース。

前置きが長くなりました。

ワーグナーの直筆のお手紙が、6月9日にオークションにかけられるそうです。おっ。レブレヒトのブログに書かれていて、どうもオークション会社はウィーンのDorotheumっていう会社らしくて、会社のウェブサイトではなぜかみつけられなかったんですが、リリース的なページ?みたいなのがあって、全文が書かれていました。

このページの結構下の方にありますけど定期的に更新されるページみたいに見えるので見に行くならお早めにどうぞ。

https://onlinemerker.com/aktuelles/

ワーグナーが、1876年9月12日にバイロイトからバス歌手のグスタフ・ジーアに宛てた手紙。グスタフ・ジーアは第1回バイロイト音楽祭の《神々の黄昏》初演(1876年8月17日)でハーゲンを歌った人物。初演からおよそ1ヶ月弱の手紙ということ。

„Eine Bitte und Frage. Wollen Sie sich den „Wotan“ ansehen? Die Klavierauszüge besorgt Ihnen gewiss Dr. Strecker (Schott, Mainz.) Sagen Sie mir dann, ob Sie sich mit dieser Aufgabe befreunden können würden. Soviel ist gewiss, dass ich nicht an eine Barytonstimme dachte, als ich sie entwarf, sondern an eine wirkliche, wenn auch umfangreiche Bassstimme. Einzelne hohe Lagen könnten abgeändert werden. – Für jetzt, geehrtester Freund, aber noch nichts davon verlauten lassen; um keinen Vorwand zu geben.“

「お願いと質問です。ヴォータンのパートをいちど見てみたいと思いませんか。ストレッカー博士(マインツのショット社《訳注:出版社》)がピアノスコアを用意してくれますよ。そののち、この役を引き受けられるかどうか教えて下さい。当初私はバリトンの声ではなく、音域は広いですがむしろ本当に低い声をイメージして書きました。いくつかの高音域は変更が可能です。この計画は、スキャンダルを避けるため今はまだ誰にも知られないようにしましょう。」

レブレヒトのブログのコメント欄に解説を書いてくれている人がいるのでそれも訳すと、「フランツ・ベッツという歌手が初演でヴォータンを歌った。この人はバス・バリトンで、イタリアの高めのバリトン、すなわち《イル・トロヴァトーレ》のルーナ伯爵や《椿姫》のジェルモンも歌っていた」「ワーグナーは(この手紙を書いた頃)まだベッツと契約をしていたので、密かにベッツを追い出す方法を模索していたと思われる」ベッツの歌唱にワーグナーは納得していなかったのだそうです。

開始価格は2000ユーロ(26.5 万円ぐらい)。集まれ猛者ども。