Blog

【訃報】チック・コリア(79)、ジャズピアニスト

チック・コリアがガンでお亡くなりになりました。有名人だけにヤフーニュースのトップに出たりしておりましたので、もう多くの方々がご存知でしょう。

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6384848

以下はチック・コリア氏にちょっとだけまつわる、むしろ個人的な思い出話です。

チック・コリアの演奏にはじめて接したのは中学生の頃だったかに兄が買ってきた何枚かのCDで、そのあとモントルー・ジャズ・フェスティバルの映像なんかも録画して観た。“Spain”はそれこそ何度も聞きましたね。

それよりもチック・コリアという名前は、私の英語の先生とセットで思い出されるんですよ。

私は中学生の時、京都の実家近くにあった個人の英語塾に通っていて、そこで英語の基礎を学びました。プログレスというものすごくそっけない教科書を使いながら教わっていました。

クラシック音楽が好きで、ポリーニが大好き、「シフラの生演奏には辟易した、演奏終わったらガッツポーズするピアニストってどうなん?」とケラケラ笑うS先生は実はかなり出来る方でした。国連の英検特Aを持っていて、国連で働かないかと誘われたが興味ないと断って個人宅で英語を教えながら通訳や翻訳をしていた、という人でした。あと外国人が日本に来た時にガイドできるとか言う資格もお持ちだったかなと思います。

「あれはなあ、日本の文化とか歴史とかそういう教養も求められる試験なんよ。あんたなあ、日本のラッキーナンバーってわかるか?8やで、末広がりやから八なの。そんなんが試験に出るんや、英語が出来るだけやったらあかんねん」そういう雑談をわりと鮮明に憶えていたりします。

で、チック・コリア。あるときS先生がチック・コリアの記者会見で通訳を務めることになり、本人と並んで会見場で座った。そうしたら通訳の仕事中にも関わらずチック・コリアが関係ないプライベートな話をさかんにしてきたため仕事に集中できず、こらっ、黙っててよ、と言ったんだそうです。「調子ええ人やったわ」。

・・・たったこれだけの話。それだけか、と言われそうですが、チック・コリアの名前や写真を見るたびにこの話を思い出すんですよ。

一年ほど前、S先生と20年ぶりぐらいだったか、電話でお話をしました。懐かしい懐かしいと言っていただいたのですが、長くご病気をされて、すっかり衰えておられる様が電話越しにも伝わり、なんとも言えない気持ちになりました。S先生はチック・コリアの通訳会場での他愛のない会話のことなどもはや憶えておられないかもしれませんが、私はこれからもずっと、チック・コリアの名前を見るたびにこの話を思い出すんだろうなと思っています。

ご冥福をお祈りします。