パリで1943年から開催されているロン=ティボー国際コンクールは日本で人気のコンクールです(今の正式名称はロン=ティボー=クレスパン国際コンクールです)。不肖わたくしもパリに観に行ったことがあります。2005年。南紫音さんが2位に入った時です。サル・ガヴォーとラジオ・フランスのオリヴィエ・メシアン・ホールだったか。ガラ・コンサートはシャトレ座でした。なおこのコンクールはフジテレビがスポンサーだったりします。
ピアニストのマルグリット・ロンとヴァイオリニストのジャック・ティボーという偉大な演奏家、教育者が連名で創設し、近年はだいたいなんとなく毎年のように開催されていましたが、昨年の声楽部門が中止になったのに続き、今年11月に予定されていたヴァイオリン部門も早々に中止が決定。
延期ではなく中止です。なので来年は(実施されたとして)ピアノ部門です。公式発表↓
https://www.long-thibaud-crespin.org/en/contest/cancellation-of-the-2021-competition.html
「非常に残念だが、ほかの選択肢はないと認めざるを得ない。健康状態が正常に戻らない限り、コンクール再開は出来ない。世界各国から人々が集まるイベントだからである」
11月なのに早すぎない?という思いもあるかもしれませんが、妥当な判断なような気もします。少なくとも、こういう早め早めの判断をするところがあってもおかしくないと思います。「やるやる」って言ってギリギリまで頑張って「やっぱりだめでした」→→→徒労感・・・ということになるぐらいなら最初からリスクは冒さない、という判断ですね。
あるいは、邪推ですけれども、ロン=ティボー国際は資金集めで苦労しているコンクールというイメージもあるんですよね。今年はスポンサーが集まらない、もしくは集まる気配がない、たぶん無理やろ、という諦念があるのかもしれません。
ヨーロッパの演奏家たちや事務所と話をしますと、ワクチンに期待をかける声も大きいですが、ワクチン、遅々として進んでませんね(イスラエルは爆速)。日本のみならず欧米でも進んでいないようですし、そもそもワクチンを受けた人は他人にうつさないかどうか、も今の所よく判っていないようですね。ワクチン受けた人が堂々と入ってきて感染が拡大しないの?という疑問点が残っています。「ワクチンしたら感染しにくくなる+他人には感染させない」っていうことがはっきりと分かればいいんですが。
言われていることですが、いまこの時期にコンクールを受けようと思って頑張っている若手演奏家たちにとってはただただ打撃です。クラシック音楽業界の衰退に加速がかかるようなことがなければいいのだが、と思います。なんとか盛り上げて行きたいのですが、今は我慢の時期だとしか言えないのがつらいところです。