世界で最も有名なギタリストの一人
英国というか世界を代表するギタリストの一人、ジュリアン・ブリーム(Julian Bream 1933-2020)がお亡くなりになりました。イギリスのウィルトシャーのご自宅にて。英国のメディアも次々と報道していますが、安らかな死だったそうです。87歳。
9歳の時、ジャンゴ・ラインハルトの演奏を聞いてギターを始める。
The Best of Django Reinhardt
その後セゴビアに出会いクラシックギターへ。ロイヤル・カレッジではピアノとチェロを専攻(ギターを教えられる教師がいなかったから)。ギターを学校に持ち込まないようにと何度か警告を受け退学。クラシックギターで生計をたてられた人間はほとんどいなかったが、1951年にウィグモアホールにデビューし、やがて世界に名前を轟かすようになった。
1984年に交通事故で右肘を骨折し再起が危ぶまれたがリハビリを経て復帰。2002年に引退。その後も自宅近所のホールや教会などで演奏は続けていたようですが、2011年にレトリバーのジャンゴ(!)と散歩中、ご近所のワンちゃんに絡まれ転倒。両腰の骨を骨折し、左手にも怪我。これによって演奏活動からほぼ完全に引退(それでもなおちょいちょい弾いてたそうですな)。しかし余生はエンジョイされたようです。
リュートも演奏するブリームはエリザベス朝の作曲家ダウランドの音楽を広めた人でもあります。古楽の専門家たちからの批判もあるようですが、まあそう固いこと言わずにダウランドのファンシーでも聞いて気持ちを落ち着けてくれよ。
録音もRCAやEMIから多数。グラミー賞を4回受賞。「録りたいものは全部録った」。男前なコメント、いっぺんぐらい言ってみたいですね。
「もう演奏していないことが悲しいと思うことは全くない。70歳の時よりもいい音楽家だってことがわかっているのにそれを証明できないことだけはちょっと残念だね」(80歳の時のインタビュー)
「楽器がいいからいい音が出る」という生徒に反応して、全員の生徒の楽器を次々と演奏してみせたところ、どの楽器からも素晴らしい音が出た、という逸話もいいですね。
ブリテン、アーノルド、ティペット、ウォルトン、ベネット、ヘンツェ、武満などがブリームのために曲を書いた。ブリテンの「ノクターナル」は超いい曲ですからギター曲にあまり興味ないかたもぜひ聴いて観られるといいと思いますよ。20分ぐらい。
●英語で読める追悼文は以下あたりに:
https://www.theguardian.com/music/2020/aug/14/julian-bream-british-classical-guitarist-dies-aged-87
https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-53777949
https://www.nytimes.com/2020/08/14/arts/music/julian-bream-dead.html