おととい、ロシア出身の大バス歌手、エフゲニー・ネステレンコがウィーンで、83歳でお亡くなりになりました。コロナで。
訃報はウィーンに住むネステレンコの家族からエレーナ・オブラスツォワ財団(モスクワ)の事務局長ナタリア・イグナテンコにもたらされ、財団がタス通信に連絡を入れた。家族によるとパンデミックにつき葬儀はしばらく行われない。遺骨は本人の希望によりモスクワに戻されるそうです。
https://www.diepresse.com/5954614/opern-bass-nesterenko-starb-an-covid-in-wien
1938年モスクワ生まれのネステレンコは1967年にレニングラードのキーロフ劇場(現在のマリインスキー劇場)に加入。1970年のチャイコフスキー国際コンクールで優勝(この時女声部門で優勝してるのがオブラスツォワです。ついでに書いとくとピアノではクライネフとジョン・リルが優勝を分け合い、ヴァイオリンではクレーメルが、チェロではゲリンガスが優勝している回なんですよ)。1971年から2002年までボリショイ劇場の歌手。ネステレンコといえばまずボリス・ゴドゥノフですか。ギャウロフなんかとも並び称され、第2のシャリアピンとも呼ばれた偉大な才能。
ちなみにこの段は豆知識:エフゲニー・ネステレンコのフルネームは「エフゲニー・エフゲニーエヴィッチ・ネステレンコ」でありまして、真ん中のエフゲニーエヴィッチは「父称」というものです。スラヴ系で使われるもので、お父さんのお名前が真ん中に入るのです。お父さんもエフゲニーだったわけ。つまり「エフゲニーの息子のエフゲニー・ネステレンコ」みたいな感じすね。相手を敬うときには父称を足して言う。あるいは、きつく叱るときにも父称を足すらしい。日本語には父称はないからわからなけど、きつく叱るときにだんだんと名前が伸びて行く感じ、おわかりになりますかね。「たーちゃん、たろう、たろうくん!!・・・田中太郎くん!!(←ここ)、ママの言うことを聴いてください!!!!」・・・・ってな感じだと思っていただいておそらく間違いないです。よくわからないって?そう、私もよくわかっていない。
ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座、コヴェント・ガーデン、テアトロ・コロン(アルゼンチン)、バイエルン国立歌劇場、ウィーン国立歌劇場など世界中のトップの歌劇場に出演し、一世を風靡した。モスクワ音楽院およびウィーン市立音楽芸術大学で後進も育てた。
ショスタコーヴィチもネステレンコのために作品を書いているのはよく知られているところ。交響曲第16番とも言われる最晩年の作品《ミケランジェロの詩による組曲Op.145》。
YouTubeを検索しますと、1976年に作曲者の息子マキシム・ショスタコーヴィチの指揮で歌った全曲がありました。ショスタコーヴィチ晩年の超暗い音楽に浸りながら追悼したい。